月下に咲く薔薇 19.
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で納得がいったのか、スメラギが小さく笑った。「ありがとう」
「まだ何か見つかるかもしれん。そのまま現場の指揮を執ってくれ」大塚が部下達を気遣いつつも続行を指示する。「何も出ない事を確認する為にも、捜索の継続は必要だ」
『了解』
ケンジと恵子が通信を切り、棘の拡大画像を保存・表示したまま通信は終了した。
「あの棘。切り花と同じく、ドラゴンズハイヴに送るべきでしょう。輸送機を呼び戻しますか?」
指示を求める城田に、「それはやめておいた方がいい」と応じたのはゼロだった。「3本の花とは違い、滑走路で発見された植物片は全て次元獣の能力を持っている。しかも、知性を持つ敵がこれ見よがしに置いて行った物ならば、バトルキャンプに留めておく事にこそ意味がある筈だ」
「いいのか? 敵の罠に自分からはまるって事だろ」口を挟むロックオンに、ゼロがぴしゃりと言い放つ。
「まだ気づかないのか!? パイロットのクロウ、機体のニルヴァーシュ、母艦のダイグレン、そして基地のバトルキャンプ。ZEXISを成す4大要素の全てに敵の痕跡が残された。もし敵の動きがあるとしたら、次は何だ? 連れ去られた2人の消耗を考慮するなら、敵の動きは1時間でも早く引き出してしまうに限る。クロウの言うとおり、リスクを織り込んで臨むべきだ。今の我々は、自力で敵の巣窟に乗り込むどころかDフォルトの突破さえ出来ないのだぞ!!」
ZEXISが抱えている最大の問題を、敢えてゼロが振り翳した。
しかも、積極的行動論を推し進める瞬間、ミシェルが大きく頷く。今日に限って口数が少ない理由の一端を、全員が間近で見せつけられた格好だ。
「アイムは昨夜、怪植物を送り込んだ敵の正体について『残された者共』という表現をした。つまり、奴自身も知っているのだ。相手が人間である事を。現状、我々だけが大きく遅れをとっている。それを誰もが理解している筈だ。神話的能力の利用を拡大しこのバトルキャンプ、ひいては地球圏に怪植物が根を下ろす前に、アイム・ライアードとの共闘を私は提案する!」
その瞬間、衣擦れや息をつく音など、全ての音が消えた。時間が止まったように感じられるのは、ゼロがもたらしたものが正しく大きく、更には重い為だ。
アイムとの共闘。インペリウム帝国と敵対するZEXISとしては、三大国家連合軍を敵に回しかねない一大方針転換にあたる。
但し、突然浮上したものではない事を全員が記憶していた。誰よりも先にその案に着目しアイム本人に突きつけた男が、この室内にいる。
途端に反論を始めようとするロックオンとレントンを、片手を挙げジェフリーがそっと制した。指揮官達は横一列に並んで座っている為、仕種が向けられた相手はパイロット達という事になる。
昨夜の発案者自らが、まず共闘推進を望む声を全て吸い上げようという腹なのだろう
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