月下に咲く薔薇 19.
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つも見当たらなくて』
「…おかしな話だな」
先端が天井を指している大塚の口髭が、小さく揺れた。
席に戻った万丈が、眉をひそめて映像を指す。
「確かに奇妙ですね。そうなると、昨夜から探して一つだけ発見できた棘というのが、それはそれで不自然な出方に感じられませんか?」
映像で傍観していたクロウも、同様の不審を覚えつつ低く唸る。
ソーラーアクエリオンとアリエティスがそれぞれの攻撃で茎束の一部を破砕したのは、夜戦を見届けた全員が知る事実だ。滑走路には数多の植物片が降り注ぎ、大小様々な破片が一度は派手に散乱した。
単純な確率の問題で、たとえ転移したものが多数あろうと、見つかるとしたら棘ではなく茎部分であるべきだろう。
しかし、何故そこまで茎部分の回収を徹底するのか。まるで掃除を済ませた後のような光景が、敵によって作られた形だ。
「…やはり、これも何かのトラップに繋がっている、と考えた方が良さそうだな」
城田の指摘する可能性に、皆が目線で肯定を示す。
「恵子君。その棘については、待機している回収班に引き継いでくれ」大塚が、映像の少女パイロットに指示をした。そして「ケンジ」と直属の部下に呼びかける。
『はい、長官』
コスモクラッシャーのキャプテンを務めるケンジが、別なウインドウをデスクの上に追加して交信を開始した。
「怪植物の破片捜索は、夜を徹して行っている。なのに今頃、茎片ではなく棘がようやく1つ次元獣の踏み跡から発見された。今、その現場で君が何を感じているか。率直なところを聞かせてもらえるか」
『自分の印象ですか。…確かに、強い違和感はあります』ケンジが、まず結論から述べた。『バラの花を除けば、ダイグレンに1つ、ニルヴァーシュとクロウに1つづつ。母艦、機体、パイロット。その全てに1つづつ敵の痕跡が残された事になります。そして、先程バトルキャンプからも1つ、植物片を発見しました。先入観による判断は危険ですが、意図的にこの組み合わせでそれぞれに残している可能性は十分にあります』
「全てに1つづつ、か。確かにそうだ」
「ケンジ隊長、スメラギです」
突然何を思ったのか、ソレスタルビーイングの戦術予報士が2人の会話に割って入った。
『はい』
「なかなか面白いところに着目したわね。では、その勘に質問させてくれるかしら。貴方の勘では、バラの花が別勘定になる理由を何と言っているの?」
段取りと思考を重んじるスメラギから、まさかの勘話が飛び出した。クロウ達も驚いたが、最も目を見開いているのは同じソレスタルビーイングのロックオンだ。
『わかりません』一つ間を置いてから、ケンジは答えとして最も弱い言葉を選んだ。『ただ、メッセージか何か、敵なりの別な狙いはあるような気がします。…すみません。良い答えではなくて』
「いいえ」それ
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