暁 〜小説投稿サイト〜
月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 19.
[1/10]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 捜索中に発見した植物片は大きさが3センチ程と、昨夜飛散した茎片の中では最小クラスに近い。ZEUTHの恵子が、携帯端末でリアルタイム映像をクロウ達のいる会議室に転送した。
 机上の映像が差し替えられ、午前の滑走路で起きた騒動を生々しく室内に伝える。
 一夜明け陽光が全てを明らかにする滑走路で、『ここだぞ、恵子』と勝平が白い手袋をした右手でめくれたアスファルトの一部を指した。
『折角だから、そのまま指先も映しておけよ。大きさが伝わりやすいんじゃないか』
 宇宙太の声は聞こえるが、生憎と少年の姿はこの画面には入っていない。
『そっか。こんな感じにすれば…』
 被写体に歩み寄る恵子が、手袋をした人差し指とその先にある黒ずんだ三角形にズームをかけた。
『いいわ。少しの間だけそのままでいて』
『いっ!?』余程不自然なポーズを強いられたらしく、げんなりとする勝平の声が『まだか? 恵子』とすぐさまの解放を望んで言う。
 襲撃者達の重量と派手な跋扈が災いし、滑走路は表層のアスファルトが剥がれ下にある金属製の防護板が一部剥き出しになっている。その凹みの一つ一つで夜はジロン達が、夜が明けてからは勝平達が、クラッシャー隊隊員達と共に敵の痕跡を探していた。
 限定的な捜索しか行う事のできなかった昨夜とは異なり、陽光が広域に照らす日中は人員投入で大規模な捜索が可能になる。それを機に、大塚は人海戦術に切り替えたようだ。
 時折、携帯端末のマイクが現場を仕切っているケンジの声を遠方から拾う。
 勝平達が発見した棘状の三角形は、めくれ上がったアスファルトに先端を突き刺した状態で発見された。色が黒に近いのは、ZEXISの反撃がその表面を焦がした為かもしれない。
「棘か。あの怪植物のものだけに、異様な大きさだな」
 親指の爪の倍以上はあるバラの棘など、誰も見た事がなかった。ライノダモンの姿を重ね合わせ、元々真面目顔のロジャーが僅かに顎を引く。
 恵子の説明が入る。
『ここは昨日ライノダモンが踏み荒らした跡で、バラの怪物が現れた場所からは300メートル以上離れています』恵子がぐっと、被写体に端末を寄せた。『ジロン達が探していた怪植物の出現場所では、まだ何も発見できません』
「恵子君、大塚だ」長官が、映像の報告者に直接声をかけた。
『はい、よく聞こえます。大塚長官』
「昨夜は、我々ZEXISとあのアイムが茎を切り裂き滑走路に幾つもの破片を散乱させている。相当数は転移し既に消えている事はゆうべの捜索で判明したが、正直なところ、これ程破片の転移が徹底しているとまでは考えていなかった。やはり茎そのものは全く見つからないのかね?」
『はい』自身でも不思議に思っているのか、恵子の声音がやや曇った。『私達もジロン達も、それが一番見つけやすいと思っていたんです。なのに、一
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ