第六十四話
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
まだ、終わらない……。
最初に浮かんだ言葉が、それだった。
殺されたのが学校の先生だったことが原因の一つかも知れない。しかし、その事実をもって説得されることよりも、唯一あの寄生根と戦ったからこそ感じられる、感じ取れてしまう例えようのない違和感。暗闇で何か得体の知れないモノを踏んだ奇妙なそして嫌な感覚。
それこそが事件の事を聞いた刹那に俺が感じたことだった。
【あれ】と戦った者のみが感じられる違和感とでもいうべきか。
死線をくぐり抜けた経験から導き出されてしまう結論。
―――それは、最悪の結論―――
多くの犠牲を払い、辛うじて退けたと思ったものがまだ、……ある。
その事実は俺の心に暗い闇を導き出す。
戦い、そして再び勝利することの困難性、……否、どうでもいい。問題なのは戦うたびに、どこかの誰かが、いや、親しい誰かが犠牲になるということなんだ。そして、その連鎖は無限に続くと言うこと。
俺が斃さない限りは。
学校関係者が犠牲者ということは、新たなる寄生根は、性懲りもなく、それともそれは必然か、やはり学校関係者に根を張ったという事になる。
そして、その結論。
再び相まみえる敵が、果たして俺にとってどのような存在なのだろうか? 誰なのだろう?
―――考えたくもない―――
王女は言った。寄生根に憑かれる存在は、寄生根に呼ばれるのだと。
負の想いへの、とてつもなく強い渇望の充足を望む人間しか呼ばれないのだと。根源の深き欲望を持つものにしかその声は聞こえないのだと。
それは悪党と呼ばれる者のみが該当するのか? ……人は普段の生活のみで判断できるものではないのだ。
日頃はおとなしかったり、社交的だったり、優しかったり、面白かったりする所謂「いい人」が果たして一人になったときもそういられると言い切れるのか? 仮面をかぶっているだけとは言えないのか? 笑顔の裏で唾を吐くような人間ではないといいきれるのか?
俺は、断言できない。
一般に言うところの、【いい人】が常に充足された生活を送っているとは言えない。
それが、社会の今の現状。
みんな心の奥底に不満を無理矢理押しやり、なんとか誤魔化して日々を生きているとは言えないか?
……そこに力が働いた時、誘惑という魅力的な甘い罠を仕掛けられたとしたら、どうなるのだろう? 確かに普段ならその罠に陥ることもは無いかも知れないだろう。だがしかし、人の精神状態は常に一定ではない。普段は穏やかでも、大きな波がたつ日もある……。
そんな落ち込んだ時に寄生根の誘いを受けたとき、人は抗うことが可能なのか?
俺の周りの人間だって犠牲にならないとは限らないんだ。
もしそうなった時、その
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ