第六十四話
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現実に直面せざるをえなくなった時、俺はどうしたらいい?
これ以上、俺の周りの大切な人たちを失いたくない。
俺は寧々を失い、親友との信頼も失ってしまった。これ以上、まだ何かを奪われるのだろうか。
……そして誰かの命を消し去らなければならないのか?
いい加減うんざりする。
逃げ出したい。今すぐにこの現実から眼を逸らし、この街から逃げ出し、安全な場所で怯えることなく暮らしたい。
―――所詮、叶わぬこと……―――
わかっている、さ。
【本気でわかっているのか? 】
もちろん、わかっている。
【俺にそんな事は許されないはずだ】
平凡な生活が許されないことくらいわかっている。……わかっているだけで、どうしてそうなのかは知らない。でも、なぜだかそれが真実だとはわかる。頭ではわかっているつもりだ。
【そうなんだ。人並みの生活など許されるはずがない。人の道を外れた、外道の俺にそんなことは許されないのだから】
教えてくれ、俺は一体何をしたんだ?
【そんなことわかっているじゃないか。俺の夢、……所詮、はかない夢。人としての幸せなど俺に許されるはずもなかろう】
いつしか俺の思考に被さるように何かが語り出す。これは何? 何? 何?
またアレが来たというのか?
いや、そうじゃない。これは俺自身の思考。
知らないけれど懐かしい存在。
俺であって俺じゃないと思っている。なのに俺であることをどこかで認識している。
【ただ言えること、それは命に替えても護らなければならないものが俺にはあること。それだけが唯一の罪滅ぼし。自身が幸福になることは許されていない。望むことすらありえない。しかし……】
希望は、ある。
それは僅かな光でしかない。けれどその僅かな希望が俺を俺であらしめ、墜ちていくことを食い止めているものであることは、なんとなくわかった……。
俺が今できること。やらなければならないことはひとつ。
目を背けないこと。現実を直視し、例えそれが誰かの死に結びつくことであろうとも受け止めなければならないんだ。俺が逃げる事、それすなわち被害が拡大することなんだから。
できることをやる。それしかない。やらなければさらに誰かが犠牲になる。
仕方ないんだ。
誰かがやらなければならない状況。そして俺にその力が与えられている。
俺には奴を止める力があるんだから。
なんとしてもこれ以上の惨劇を止めなければならない……。
俺がやらなきゃ誰がやる。
そんな言葉が浮かんだ。
殺された寧々、そして彼女を失った家族や漆多、そして友人達の悲しみ。同じ悲しみをこれ以上広げちゃいけないんだ。
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