15部分：第十五章
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「ですから」
「わかりました」
騎士のその力強い言葉に打たれたのでしょう。姫はまだ戸惑った顔でしたが頷いてくれました。
「騎士様」
そして白鳥の騎士に声をかけます。
「貴方に。是非」
「お任せ下さい」
騎士もその言葉を受けます。そのうえでの言葉です。
「是非共私に公爵閣下を」
「それでは」
「いますぐにでもはじめましょう」
また姫に対して言います。
「ですから。姫様はここでお待ち下さい」
「宜しいのですね」
「私は。誓ったことは決して破りはしません」
毅然とした声でした。これこそが騎士の声でした。
「今誓いました。貴方に」
「それでは。ここで待っていれば」
「必ずや。幸福が訪れるでしょう」
「私にですね」
姫の目が少し熱いものになっていました。その声で騎士に尋ねます。
「私に。幸福が」
「いえ、それは違います」
騎士はその目と声には気付いていませんでした。素直にこう答えたのでした。
「貴女達に」
「そうですか。それでは」
姫はその言葉を受けました。そのうえでまた言うのです。
「貴方にも」
「私にも？」
「はい。宜しいでしょうか」
また騎士をじっと熱い目で見ます。
「貴方にも幸せが」
「私にも、ですか」
その姫の顔を見て問います。彼は姫がどうしてそうした顔なのかまだわかっていません。
「それは一体」
「弟を。お願いします」
そんな彼に姫はまたこれを御願いしました。
「そうして。後でまた」
「はい、また御会いしましょう」
騎士はその言葉と共にすくっと立ち上がりました。そうして部屋を後にするのでした。その背中に姫の視線を受けながら。一人姫の願いを適えに向かいました。
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