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大切な一つのもの
14部分:第十四章
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第十四章

「どうして公爵様は急に」
「それは司教様と姫様から御聞き下さい」
 兵士は騎士にそう言いました。
「私だけでは知らないことも多いので」
「左様ですか」
「ええ、御二人から御願いします」
 それをまた言います。
「お話に関しては」
「ええ。それではそのように」
 こうして騎士は姫様の部屋に向かいました。白い、雪のような宮殿の中を進んでいくとやがて姫の部屋に辿り着きました。樫の木の扉を開けるとそこには白い絹のドレスに身を包んだ非常に美しい姫が立っているのでした。
 黄金を溶かしたような豊かな金髪に湖の色をたたえた澄んだ青い目、すらりとした背の高い身体をしています。顔は雪と同じ色をしていてまるで絵の中から出たような美しさです。
「貴方は」
「私は騎士です」
 そう姫に名乗ります。
「騎士ですか」
「はい、人は私を白鳥の騎士と仇名します」
「白鳥の騎士といいますと」
 その名を聞いて姫の顔が一変します。憂いに満ちた悲しいものから明るいものになっていくのでした。
「貴方があの」
「はい、ローエングリン」
 今度は自分の名を名乗りました。名乗りながら片膝を姫に対してつきます。
「それが私の名です」
「ローエングリン様がどうしてこちらに」
「陛下よりあることを承りまして」
「陛下から」
「そうです」
 そう姫に答えます。答えるその声は厳かでとても澄んだものです。
「この世で最も大切なもの。それを探し出して欲しいと」
「この世でですか」
「そうです。ですが」
 ここで彼は言いました。
「それよりも前に私はこちらに参りました」
「こちら・・・・・・私のところにですね」
「その通りです」
 姫の顔を見て答えます。
「貴方が窮地に陥っておられると御聞きしまして。違うでしょうか」
「否定はできません」
 気丈さがありながらもそれが今にも折れてしまうような、そんな声でした。その声こそが今の姫の置かれている状況を表していました。それが何よりの証拠でした。
「弟は。一体何処に」
 憂いに満ちた顔で言います。
「果たして無事なのでしょうか」
「御自身のことは構わないのですね」
「私のことですか」
 騎士の言葉にまた顔を向けます。その顔は自分を見ているものではありません。そう、弟である公爵をじっと見ている、そうした顔でありました。
「貴方は公爵様の失踪で嫌疑をかけられているのですね」
「ええ」
 その問いにこくりと頷いて答えます。
「その通りです」
「ではこのままでは」
「私のことは構わないのです」
 しかし姫は騎士に対してこう述べました。
「私のことは。私の潔白は神々が御存知です。ですから」
「ただ弟君だけを」
「そうです」
 迷いのない、その言葉でまた答えるのでし
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