10部分:第十章
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第十章
「姫の顔もまた」
「あの白い顔が少しずつ」
赤みがさしていきます。そうして遂には顔をあげ血の気がある顔になったのでした。
そうして遂に。姫の声が聞こえてきました。
「まさか」
「姫がっ」
騎士の一人が竪琴の音の中で声をあげます。
「言葉を話された」
「まことなのか、これは」
それは本当のことでした。今姫は確かに声を出したのです。
「あの」
一言ですが。今確かに言いました。
「この竪琴の声は。まさか」
「間違いない」
伯爵も声を出しました。
「姫が話されている」
「声を出した」
「貴方なのですね」
姫はその中でまた声を出しました。
「私に。この竪琴の声を聴かせてくれているのは」
「はい」
琴の騎士が姫に答えます。
「そうです。沈んでおられる姫の御心にせめて届けばと思っていたのですが」
「私は。ずっと待っていたのです」
姫はそう彼に告げました。
「待っていた?」
「そうです。貴女が戻って来られるのを」
また彼に言いました。
「ですが。その時が何時まで経っても来ず」
「塞ぎ込んでしまわれていたのですか」
「そうなのです」
そうだったのです。姫は慕っている琴の騎士がいなくなり、彼を想うあまり塞ぎ込んでしまうようになっていたのでした。しかし彼の琴の音を聴いて。今彼が戻って来たことを知ったのです。
「ですがそれも終わりです」
「終わりですか」
「はい」
ここですっと立ちました。
「貴方がおられるだけで私は」
「どうなのですか?」
「幸せです」
そこには何の邪念もありませんでした。真の心そのものの言葉でした。
「願わくばこの幸せを永遠に」
「うむ」
彼女の叔父である伯爵はその言葉に頷いたのです。それから琴の騎士に顔を向けます。そうして今運命の言葉を彼に告げるのでした。
「では卿に姫を」
「はい、それでは」
伯爵の前に片膝をつきます。騎士らしい端整な仕草で。
「その御言葉、喜んで」
そのうえでまた言います。
「そして私は見つけました」
「この世で最も大切なものをか」
「その通りです」
また彼に答えました。
「この世で最も大切なものを今」
「ではそれを陛下にお伝えせよ」
「はい、陛下に」
「今ここでそなたが見つけたこの世で最も貴いものをな。よいな」
「無論」
頭を垂れて彼に答えます。
「それでは今より」
「思えばそれは人の側にあるものなのだな」
「はい」
また伯爵の言葉に頷きます。
「そうでした。思えば」
「しかし見つけにくいものだ」
伯爵はそうも言います。それを今はっきりとわかっていたのです。
「だからこそ。大切なものなのだろうな」
「ですね。では伯爵。姫は」
「うむ、頼むぞ」
伯
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