十八話:開演の時
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ら、はやての身の上の話を聞かされたためにプレゼントすら渡せずに帰るのは良くないと思う。
そのために動くに動けずにそわそわと小刻みに動き始める少女二人。
その様子を冷たい眼差しで見つめながら切嗣は作戦が成功したことを確信する。
(偽物が管理局の囮となっている間に騎士達からリンカーコアを奪い闇の書を完成させる。そうすれば、邪魔が入ることなく永久凍結が可能になる。管理局が気づいて来ても丁度良い保険になるだけだ)
全ては今夜、終焉を迎える。最少の犠牲で最大の幸福が保証される。
奇跡も何もない実につまらない、すさんだ舞台。
出演者は優しい少女とその家族。そして、客など居ぬのに踊り続ける滑稽な道化。
開演の幕は今上げられようとしていた―――
「そう言えば、ヴィータちゃんやシグナムさんは元気ですか? はやてちゃんのお父さん」
(シャマル、妨害を!)
だが、そこへ二人の可憐な少女が飛び入りで参加する。
奇跡を起こし、観客を魅了し続ける飛び切りの役者が。
誰よりも道化と正反対に位置するスターが現れる。
「……ああ、元気だよ」
「あ! そう言えば……ごめんなさい」
素早く、近くに潜ませていたシャマルに念話妨害を行わせる切嗣。
すずかに対して口止めを怠る程愚かな彼ではないが、常に成功するとも限らない。
何より身内とそれに近い石田とそうではないすずかでは無意識下での規制が違いすぎる。
脅しであればうっかりでも口を割らないであろうがあくまでもお願いとして言っておいたのだ。それも優しいシャマルが。
切嗣ならばすぐ身近になのはとフェイトがいなければ洗脳魔法の一つや二つは使っただろうが気づかれる可能性を考慮して止めたつけが最後の最後で回って来る形となった。
「あの……ヴィータちゃんって」
「シグナムって……」
「うん、二人はね、僕の―――大切な家族だよ」
恐る恐る尋ねてくるなのはとフェイトに隠すことなく伝える。
策は不完全な形となった。しかし、まだ失敗と言うには早すぎる。
管理局側が不自然さに気づきこちらに向けて動き出す前に真の覚醒を行えば問題はない。
せいぜい二人には騎士達の最後の戦いの相手でもして貰うとしよう。
「さあ、そろそろ行こうか。はやてにプレゼントを上げにね」
何の感情も籠っていない声で四人に呼びかけ背を向ける切嗣。
なのはとフェイトも話し合いがしたいので危険は承知でその背中についていく。
役者は揃った。終焉のカーテンは今上げられる。
始まる舞台は喜劇か悲劇か。それは彼等にすら分からない。
だからこそ面白いのだと、誰もいないはずの観客席の客は|異形の笑み《
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