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逆さの砂時計
対峙
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け作用したのか?
 「元人間が、よく使えている。良い声だ」
 「ええ。良き師範と教師の指導で三日三晩、発声練習と音階矯正、腹筋と背筋の強化に努めましたから。数少ない長所が一つ増えました。人前で自慢しようとは思いませんが」
 「勿体無いな。俺ならもっと自由に歌わせてやれるのに」
 「この一件が片付いたら固く封印するつもりなので、謹んでお断りします」
 「それは残念」
 愉しそうに笑いながら残念と言われても。
 「で? 対策は無く、言葉が効かないのも実証した。マリアは戦力にならないだろうし、ベゼドラは離れた場所に居る。お前一人でこれからどうする?」
 ふむ。
 どうするかと尋かれると、実は少し困ってたりする。
 初撃を受けて直ぐに嫌な予感はしたのだが……多分、アリアは来ない。私が助けられた時の状況を再現できれば良かったんだけど……そう上手くはいかないらしい。
 が。
 「ご存知の通り、私は人間なので。言霊が使えないなら、使えないなりにお相手願うだけです」
 想定外の事にいちいち戸惑っては戦いなどできない。
 両手で柄を握り、心を静め、目の前の敵にひたりと切っ先を合わせて、睨む。
 「剣……か」
 目蓋を閉じたレゾネクトは、何事か思案する素振りを見せた後……開いた視界に私を見据え、笑みを消した。
 ……危険だ。何かを狙ってる。
 頭と心臓に「下がれ」と信号が送られてる。
 「……直ぐには死んでくれるなよ?」
 冷酷に歪んだ口元。これまでにない殺意。
 全身の血液が凍る。逃げろと訴える自分の本能。
 だが。
 「死ぬ気なんて、少しもありませんよ」
 それこそ、望むところだ。

 
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