対峙
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持っていたせいなのか、他に理由があるのか。
結構重要な手掛かりになりそうな気もするのだが。
私が自分自身を把握しきれてないせいで、判断材料としては弱い。
それでも今は、私には力が効かないらしい事実と、そこから推測する私の『言霊』と、彼の『謎の力』との相性の悪さ。言葉を通してくれるもの達の意思を信じるしかない状況だ。
我ながら心許ないな。
……愚痴ていても仕方ない。
とにかく、レゾネクトが現れるまで考えつく限りの妨害工作を続けよう。
広げたままの翼をはためかせて、遥か上空へと翔び上がり。
山脈を彩る薄紅色の絨毯を視界の端に捉えながら、次の場所へ向かう。
サクラの森の周辺は人間が少なくて助かる。
万が一にも、私が飛翔する姿を見られていたら……
「っ!? ぅわっ」
真正面から突然、薄い緑色に光る矢が飛んできた。
現れてくれたのはありがたいが、これはちょっと、前触れが無さすぎる!
避けて落下しかけた姿勢をなんとか立て直して、飛来元に顔を向けると、まるでそこが地面であるかのように直立で浮いてるレゾネクトが居た。
さすがは魔王。
重力は完全無視ですか。
「ずいぶん、いきなりですね」
「お前の望みに合わせたつもりだが。鳥は弓矢で落とすものだろう?」
「なるほど、私は狩りの獲物だと。相変わらずの悪趣味で!」
腰に下げた剣を抜き、レゾネクトめがけてまっすぐ飛びかかる。
一ヶ月の間、ほとんど毎日翔んで移動していたおかげで、空中の動きにもだいぶ慣れたが。
なんと言っても、相手は真性の人外生物。
刺突も斬撃もすべて、軽々と余裕たっぷりに避けられてしまった。
「悪趣味、ね。それなら、お前はどうなんだ? フィレス。アリアシエルを中心に無数の結界で世界を丸く囲って、俺を追い込もうとしていただろう。漁師の真似事かと思ったぞ」
レゾネクトの腕が、私の腕を捕らえる為に動く。
咄嗟に翼で弾き、再び距離を置いた空中で身構える。
早速、師範の教えが活きたな。
近距離では捕まるし、遠距離では矢が来るし。
この戦闘、実に際どい選択を迫られそうだ。
「私は網より針派なんですけどね。貴方は釣られてくれそうにないので」
「旨い餌が付いていれば、呼ばれてやるさ。お前に、釣り道具ごと喰われる覚悟があればな」
「ご冗談を!」
大きく羽ばたいて、薄く伸びる雲を蹴る。
「『風よ、水気よ、うねり乱れ吹き荒れよ。眼前の破壊者を弾き飛ばせ』」
振り上げた剣身に、水分を含んだ風が絡みつく。
巻き上げた強風を刃に乗せ、レゾネクトに向けて思いっきり放つ。
轟音と共に圧が走り……衝突する間際、彼の姿が ふっと消える。
空間を移動したか
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