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逆さの砂時計
対峙
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前の望みに合わせたつもりだが。鳥は弓矢で落とすものだろう?」
 「なるほど、私は狩りの獲物だと。相変わらずの悪趣味で!」
 腰に下げた剣を抜き、レゾネクトめがけて真っ直ぐ飛び掛かる。
 一ヶ月の間、殆ど毎日翔んで移動してたおかげで空中の動きにもだいぶ慣れたが、なんと言っても相手は真性の人外生物。刺突も斬撃も総て、軽々と余裕たっぷりに避けられた。
 「悪趣味、ね。それならお前はどうなんだ? フィレス。アリアシエルを中心に幾つもの結界で世界を丸く囲って、俺を追い込もうとしていただろう。漁師の真似事かと思ったぞ」
 レゾネクトの腕が私の腕を捕らえる為に動く。咄嗟に翼で弾いて、再び距離を置いた空中で構え直す。
 師範の教えが早速活きたな。
 近距離では捕まるし、遠距離では矢が来るし……この戦闘、実に際どい選択を迫られそうだ。
 「私は本来、網よりも針で釣るほうなんですけどね。貴方は釣られてくれそうになかったので」
 「旨い餌が付いていれば呼ばれてやるさ。釣り道具ごと喰われる覚悟があればな」
 「ご冗談を!」
 大きく羽ばたいて、薄く伸びる雲を蹴る。
 「風よ、水気よ! うねり、乱れ、吹き荒れよ! 眼前の破壊者を弾き飛ばせ!」
 振り上げた剣身に水分を含んだ風が絡み付く。巻き上げた強風を刃に乗せ、レゾネクトに向けて思いっきり放つ。
 轟音と共に圧が走り……衝突する間際、彼の姿が ふっと消える。
 空間を移動したか。なら、当然
 「後ろでしょうね」
 体を反転、翼を畳んで急降下。
 頭から地面に落ちて行く最中、空を蹴飛ばす足先にレゾネクトの姿が見えた。
 空振りする彼の腕を確認して翼を広げ、一気に上昇する。
 「広がれ、拡げよ。我が声、我が意思。我らの糸を此処に繋げよ!」
 言霊を紡ぎながら突進してレゾネクトの腹部を薙ぐ。
 うん。当たらないのは当然と思っておこう。
 彼は幻影……彼は幻影……。
 「……マリアと合流した割りに、お前達は気配を消す以外の特別な対策をしていないのか。本気で戦うつもりじゃないなら、何故俺を招き寄せた?」
 「必要無いからですよ。貴方には今此処で退場していただく! 風よ……」
 翼で空気を叩いて数歩後ろへ退き、剣を掲げ
 「喧騒」
 「    」
 ……は? え、何……声が、出ない?
 集まり始めてた風が、音も無く散った。
 「!」
 そうか、これか。
 マリアさんの仲間だったコーネリアさんが、急に喉を押さえて崩れ落ちた理由。
 今、レゾネクトは力を使った。
 私にもしっかり効いてる。
 「冷静だな」
 瞬時に伸びた手をかわして、剣を構える。
 意外そうに誉められても嬉しくはない。
 呼吸は……できてるな。声は
 「……おかげさまで」
 ちゃんと出る。
 一瞬だ
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