プロローグ.
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ある日、ある時、ある瞬間。
『ある兄弟』がそろってこの世に生を受けて、満ち足りた表情と荒々しい黒々とした欲望であふれている大人たちをよそに大きな声で元気に泣いた。
そのいかにも元気そうな赤ん坊たちはのちに、片一方が王となり、片一方が王を補佐する役目を担う、今は一介の王子という存在だった。
「ああ、よかった、本当によかったよ」
今の王様である中年のやや痩せ気味の男はこうつぶやいた。安心と、安堵で胸をいっぱいにしたその表情は実に父親らしく、数か月後には立派な肖像画にさえされた。
「これで、後継ぎが生まれた。特に最初に生まれた子には媚びを売って、今度こそは良い暮らしをしたいものだ」
汚い大人たちは、純粋に、無邪気に、想像も出来ない豊かな暮らしを頭に思い描いていた。
全ては、大人たちの思い描いた通りに進むはずだった。
進む、『はずだった』
赤ん坊にはすぐに国をきっての最高級のミルクが届けられ、間違っても口に異物が混入しないようにと、念入りにチェックされたおそらくこの国一番の贅沢なミルクを口にしなかった。
それどころか、嫌がって一滴も口に入れようとしない。
何が悪いのか女王である美しい女性はわからなかった。
「ああ、どうしよう」
生まれてまだ五日と経っていない赤ん坊は日に日に弱っていった。
ある日、赤ん坊の弟の方が、母親のつけている純金の指輪を嬉しそうに見つめて離さなかった。
「この指輪が気になるの?」
母親は少し躊躇ったが、可哀想な息子の為にならばと純金の指輪を渡した。
今までにないほどの恍惚の表情を浮かべる我が息子を愛おしく思った母親はそこで自らが起こしたミスに気付いてしまった。
普通母親というものは、玩具なり本なりをほんの数日たった息子に与えることはしない。それが仮に、食べ物に何の理解も示さない赤ん坊でもだ。
何故か、答えは簡単。なんでも口に入れてしまうためだ。
母親がその考えを頭に思い浮かべた時にはもうすでに何もかもが手遅れだった。
赤ん坊はその指輪を口に入れて、胃の中に押し込んでいた。
しかし、赤ん坊は全く体調を崩さなかった。
むしろ、数日前よりもはつらつとしていて体調も良いようだった。医者も首をかしげるほどの生命力に城の住民は戸惑った。
どんどん弱っていく兄と元気な弟の対比が恐ろしく、人々の精神が崩壊に達しようつぃたその時、一人の科学者がこんな結論を言い渡した。
「貴方たちの息子は宝石を食べなければ生きていけない奇病だ」
それは、あまりにも悲しい結論だった。
数日たった後、兄にも純金の金を与えたとこ
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