第二章 【Nameless Immortal】
弐 見えぬ分水嶺
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けたのか分からない溜息をカリアンはつく。
「それで、どういう要件かな」
「話があるというので呼んだのはそっちでは?」
「ここではなく私の家で、それもレイフォン君も一緒にの予定だったのだがね。時間も早い。……まあいい。君の考えていることは大体わかるから納得しよう。座ってくれ」
勧められたままクラリーベルがソファに座る。
カリアンは鞄から封筒を取り出す。部屋の扉の鍵を閉めたのちネクタイを整え、テーブルを挟んでクラリーベルの対面側のソファに座る。
「どうかしたかい?」
「ああ、いえ。何も」
執務机の上を眺めていたクラリーベルが視線を戻す。
「本来ならフェリも交え料理でもつつきながらと思っていたのだがね」
「非常に心そそられる提案ではありますがまた今度ということで」
「何にせよ堂々とここに来るのは避けて欲しかったよ」
「牽制ですかね一応。私を通そうとしたのは義理を感じましたが」
「それはよかった」
わざわざ手紙を渡す順序をフェリに言ったかいがあったとカリアンは思う。
もっともこの様子ではレイフォンの方に渡ったのかは疑問だが。
「茶の一つも出せないのは申し訳ないが本題に入ろう。君たちを呼ぼうと思ったのは見て欲しい物があるからだ」
カリアンは封筒の中から一枚の写真を出しクラリーベルへ向けて差し出す。
だがクラリーベルは受けとらず口を開く。
「先に言っておきますが私兵になるつもりはありません」
「まだ私は何も言っていないよ」
「人目を避けてわざわざ私たち二人をという時点で想像はつきます。いざとなれば出ていくこと忘れてはいませんよね」
「勿論。だが写真を見てから決めてくれてもいいのでは?」
クラリーベルの判断基準がどこにあるのか厳密にはカリアンは知らない。知らないからこそ判断を仰ぐ。
なのにその判断を下すための材料を見ずに決めるのは早計ではと告げる。
「知った責任は? こちらは見ない事を理由に出ていく事も出来ます」
だがクラリーベルはそれを否定する。
知ることで生まれる責任というものを懸念する。
「現時点で不誠実と拒絶するならそうだね。だが私はこの間の君を、シェルターは守るといった優しさを信じるよ」
クラリーベルが僅かに眉間にしわを寄せる。
ポケットを漁ったクラリーベルは小封筒を取り出す。常のそれと違った様相のそれは中を見ずとも何の入れ物か分かる。
チケット。それも放浪バスの物だ。見せるという事は恐らくは近々出るバスの物だろう。
封筒の汚れや折れからして今のために買ったわけでは無い。有る程度定期的に買っているのだろうとカリアンは推測する。
その封筒を数秒眺めたカリアンは口端を緩め小さく笑う。
「わざわざ見せ
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