第二章 【Nameless Immortal】
弐 見えぬ分水嶺
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不夜城。
夜も灯が消えぬ家城。眠りもせず動き働き続ける場所の呼び名だ。
病院やインフラ施設ならば感謝の念を抱き研究室や飲食店ならば恐怖と黒の称号が冠せられる。
今でこそ減ってきているが汚染獣が襲来してから暫くはそんな不夜城がツェルニでは増えていた。
生徒会塔もその一つだ。
膨大な事後処理や建設計画、補給物資や臨時予算の書類の認可。
情報の収集・処理・告知とその指揮。
臨時休暇による授業計画の練り直しに各学科長との打ち合わせ。
今後に備えた対汚染獣戦におけるマニュアル作成や事前防護策の準備。
などなど。
一言でいえば生徒会の面々はとても忙しかった。
差し入れの栄養ドリンクで備え付けの冷蔵庫が埋まる。かと思えば次の日には空になる。
ふと気付けば冷蔵庫の横で詰みあがる箱の山。それくらいには生徒会は忙しかった。
そしてカリアンはその中でももっと忙しかった。
それでも一段落の目途が立ち昨日からは日が変わる前に帰れるようになった。
家のベッドで寝れるのだ。泊まり込みをしていた当初から比べれば大きな進歩だ。
生徒会長室で執務机の前に座るカリアンはペンを握る手を止めた。
温くなった手首の冷シップをゴミ箱に捨て軽く伸びをする。
疲れ故の息苦しさで服装もラフだ。上を脱いだ制服のシャツでネクタイも緩めてある。
窓の向こうに見える空は既に日が落ち月が見えている。一年前なら既に帰っている時間だ。
時計を確認しカリアンは椅子から立ち上がる。部屋の隅のハンガーにかけた制服の上着を纏う。
まだ別室では他の生徒会役員たちが残っているだろう。カリアン自身まだ仕事は残っている。
だが今日は別件で人と会う用事が入っているため帰らねばならない。もう一、二時間は仕事を片付けては置きたいが相手が相手だ。遅れでもしたら何を言われるか分かったものではない。
先に帰ってしまうのは心苦しいが仕方ない。帰る際に一言詫びていけばいいだろう。
栄養ドリンクの瓶を纏めて隅に寄せカリアンは机の上を片付け始める。書類を整理し引き出しや棚に仕舞い家に持ち帰っても問題の無いものを一か所に纏める。他の役員が忘れていった筆記用具も出てきたのでペン立てに差す。
机の鍵を開け一番奥から封筒を出す。それを持ち帰る物と一緒に鞄に仕舞おうとすると部屋の扉をノックする音が響く。
カリアンが返事をするよりも早く扉が開く。
「失礼します」
入ってきたのはクラリーベル・ロンスマイア。
今日会う予定だったうちの一人だ。
「君は二度目だが、返事があってから入ることを心掛けるべきだね」
「様子を聞いたレヴィさんから勝手に入っていいと聞いたもので。次から善処します」
「……はぁ」
どっちに向
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