後ろにいる影
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ここまでくると本当に聞きたくて仕方がなくなった。僕はまた問うた。
「よかったら教えて下さい、本当に」
「いいのですね?」
彼は僕に目を向けて問うてきた。とてつもなく暗い目であった。
「うっ」
僕はその目を見て一瞬怯んだ。だがそれでも答えた。
「お願いします」
「わかりました。それでは貴方は」
今度はマスターに尋ねてきた。マスターにもおそらくその暗い目を向けているのだろう。いつもは落ち着いたマスターも戸惑っていた。だがマスターも答えた。
「わかりました。お願いします」
「それでは」
彼はそれを受けて話をはいzめることにしたゆっくりと口を開いた。
「私は以前考古学者をしていました」
「考古学者ですか」
「はい」
僕の言葉に対して頷いた。
「専門は日本の。まあ古代の土器なんかを発掘しておりました」
「あれは中々面白いそうですね」
「ええ」
彼は僕の言葉を聞いていささか機嫌をよくしてそれに応えてくれた。
「楽しい仕事でしたよ。色々なものも見つかりますし」
「そうですか」
見ればその目が僅かだが輝いていた。その仕事が本当に好きだったらしい。
「それが楽しくてね。やっていたのですよ」
「ふむ」
マスターはそれを聞きながら彼の前にカクテルを一つ差し出した。青いカクテルであった。
「これは私のおごりです」
「どうも」
「マスター、僕には?」
「貴方はいつも通りです」
「ちぇっ」
そう言いながらも僕は彼のものと同じ青いカクテルを注文した。そしてそれを手にして口に入れた。彼もそれを手にしていた。
「それでですね」
「はい」
僕達は彼の話に戻った。
「文献を調べているうちに面白い遺跡を見つけたのです」
「遺跡ですか」
「ええ。それは古墳でした。その地方の高貴な血筋の者の古墳だったようです」
「豪族とかそういったものですね」
「それはどうでしょうか」
だが彼は僕のその言葉に否定的な素振りを見せた。
「違うのですか?普通古墳といえば」
「普通はそうですね」
彼は暗い声でそう答えた。
「私も最初はそう思っていました。また豪族か誰かの古墳なのだろうと」
「違ったのですか」
「そうであったらどれだけよかったか」
その声が暗さを増した。
「本当に今でもそう思います」
「それでどうしたのですか?」
「古墳のことでしょうか」
「ええ」
他に何があるのだろうと思った。どうもこの人の素振りはおかしい。何かあるとしか思えない。
「よかったらそれをお話して欲しいのですが」
「わかりました」
さっきと同じやりとりである。だが何か僕は開いてはいけない門を
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