暁 〜小説投稿サイト〜
伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第十二話(上) 列島騒乱
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なぁにまだまだ余裕はあるわい。それにワシの仕事は増えるが、近くの道路からまた用意すればよい話……」

 オーキドは表情を変えずに平然とそう言ってのける。

「オーキド殿がそう言うなら別に止めないがな……。ほら、これ持ってさっさと行け」

 サカキは少しばかり苛立ちながら遣いに書状を渡す。

「はっ!」

 そう言って遣いはドアを閉め、38番道路へ向かう。

―午前10時20分 38番道路 ゲート前―

 劣勢の二戦線とは打って変わってこちらは穏やかな雰囲気だった。
 アポロ主導の土竜作戦(エンジュから39番道路まで穴を掘ってモンスターボールを大量に送り込み、予めその密かに用意した別働隊が後ろから攻撃する作戦。シジマは当初猛烈な勢いで進撃していた為これが功を奏した)によってモーモー牧場付近に追い詰められたシジマ率いる第三軍は孤立、包囲状態に陥って壊滅も時間の問題なのだ。その為アポロは悠長に爪を研ぎながら椅子に座っていた。

「アポロ様!」
「何度来ても無駄です。今、私に軍を割く余裕はないのですよ」

 アポロは片手の綺麗に研がれた爪を見、もう片方の手で振り向きもせず追い払う仕草をした。
 アポロの言っていることは半分事実である。二戦線に比べて優勢なのは明らかだが、相手は猛将のシジマである。多少でも手を抜けば中央突破されて逃げられる可能性がある為包囲に全軍を使っているし、アポロ自身この日中にアサギまで侵攻したがっており、猛者が集うアサギの灯台のトレーナーなどそれなりの抵抗が予想されるためその戦力も温存したかったのだ。

「いえ、サカキ様の命令です。すぐに援軍を送ってください」
「え、サカキ様?」

 その単語に彼は振り向く。
 そして遣いの持っていた封書を見て

「こ……これは確かにサカキ様揮毫の書状……! ハハーッ!!」

 アポロは地に這いつくばって深く土下座して控える。
 遣いはその姿に彼へ気づかれないように笑いをこらえる。疑問に思わないのはこれがいつものアポロだからである。
 数秒ほどその態勢になったかと思うと、恐れ入ったような動きで両手で書状を受け取り恭しく礼をし、丁寧に漸く封を開ける。

「サカキ様の御下命では致し方ありませんね……。分かりました。半分ほどをそれぞれの戦線に送ると伝えてください。ランスには私から遣いを出します」
「はっ。了解しました」

 遣いはそういうとすぐさま42番道路へと戻っていった。

―午後1時 39番道路 モーモー牧場近く―

 一時、西側ゲートの三キロ前ほどまで前進していた第三軍は反攻によって38番道路と39番道路の境界付近に追い詰められ、アポロの軍勢に包囲されていた。
 しかし、包囲されてから五時間、壁や木など障壁になるものが何もない
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