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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第九話 厳冬の果てに
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―4月22日 午前9時15分 チョウジタウン ポケモンジム―

 外は穏やかな風が吹き、陽春(ようしゅん)(うら)らかな陽気がやってきているというのにジムの中は真冬の原野の如く殺伐たる雰囲気に満ちていた。
 初手の陣容はヤナギがジュゴンとマニューラを、レッドは機を見計らうためにカビゴンを、エリカはルンパッパを繰り出していた。

「マニューラ、カビゴンにけたぐりだ」

 マニューラは敏捷(びんしょう)な動きでカビゴンに接近し、足を強く蹴り上げる。
 最大威力で蹴り上げられたカビゴンは一回宙を舞って、そのまま落ちた。この身軽そうな躯体(くたい)からは想像もできないほどの膂力(りょりょく)である。
 相当に鍛えあげていることが見て取れた。とはいえ、所詮は不一致なのでそこまでの致命傷にはならず三分の二ほどの消耗にとどめた。

「ジュゴン。潜れ」

 ヤナギはルンパッパへの警戒か、ダイビングへの準備としてジュゴンを水中に潜ませる。

「ルンパッパ。光を集めるのです」

 エリカはそれを読んでいたかのように、顔色一つ変えずに冷静な様子で指示した。

「カビゴン! カウンターだ。仕返しをしてやれ!」

 レッドはここぞとばかりにヤナギ対策の一環で修行の最中に覚えさせていたカウンターを指示。カビゴンは覚醒し華奢(きゃしゃ)なマニューラを相手取って殴ったり蹴ったりの大暴れをしてみせた。これがポケモンバトルでなければただのイジメのように見える。
 防御が薄氷の如く脆弱(ぜいじゃく)なマニューラにとってこれは致命傷である。いや、それ以前にカウンターは直前に相手から受けていたダメージを二倍にして返す技なのでけたぐりで半分以上削れているカビゴンの攻撃はまさに一撃必殺となる。
 が、そこはやはりヤナギである。

「クソッ……」

 レッドはふらふらながらも一応はなんとか立っているマニューラを目にして歯ぎしりする。
 気合の(たすき)を身に着けており、体力を1残して瀕死は免れた。ミカン戦で似たようなことは何度も経験しているというのにこの悔しさにレッドはやはり慣れない様子である。
 ヤナギはすべて見透かしていたのかその冷厳な表情は微塵(みじん)も変わることはない。
 レッドはこのままだとどうあれ次のターンでカビゴンは倒されてしまうと考え、帽子を目深(まぶか)に被りポケモンの交替を思案する。仮にここを耐えたとしても、カビゴンにとってけたぐりという大きなリーサルウェポンを持っているマニューラが残っている限りは安心することはできない。ならばここはカビゴンは温存すべきだろうという思考に至る。
 が、まだ一体も倒せていない状況下で奥の手を見せるというのはヤナギの思い通りになっているようでどうも面白くないとも彼は思
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