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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第九話 厳冬の果てに
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か! カメックス! ありったけの塩水をマンムーにくれてやれ!」
「あいよマスター!」

 レッドはブリザードを前にして恐怖に震えていたが、態度だけは毅然に繕ってどうにかごまかそうとした。
 ポケモンの前で主人が強張っていては勝てる勝負も勝てなくなる。
 カメックスが砲筒からだした塩水はブリザードの中へと飛び込んでいったが、カメックスには全く手ごたえが無い様子だった。

「つっ……どういうことだ!」

 レッドには何が起こっているのか全く理解出来なかった。
 すると、黙していたエリカが口を開く。

「もしかするとブリザード空間の中で凍ってしまったのでは……?」
「そ、そんな! だってお前塩水はなかなか凍らないって」
「私は凍りにくいとは述べましたが、凝固点が存在しないと申し上げたのではありません。たしかに塩水は普通の水に比べれば凝固点が低いかもしれませんが、それはあくまで普通の水と比べての話です……つまり」

 そこまでエリカが言うと、ヤナギが氷の向こうから大きな声で口をはさむ。

「女史の推察の通りだ! ブリザード空間内の気温は零下40度! 如何に塩水といえど凍りつく酷寒よ! ついでに教えて進ぜよう。水に限らず氷以外のすべての有体物はこの空間の中で氷塊と化す! このブリザードのある限り多くの技はここまで届かぬ!!」

 二人はそれを聞いて大いなる絶望を覚えた顔となる。
 つまり、このブリザードという状態は氷壁とも言うべき結界が生じていると言って過言ではないのだ。

「私がこの技を編み出して以来、これがおさまった後に手持ちを残していた者はおらん。さて、ポケモンマスターを目指すご両人よ。これを越えてみるがいい」
 
 言葉そのものは静か、だが、今まで聞いたことが無いほど強い意志が宿ったかのような声でヤナギは言った。
 そして、これを言い終わるとヤナギはまたも沈黙に戻る。
 
「なんということだ……これがヤナギさんの力なのか……」
「老いてなお世界で一二を争う強さと言われるのも納得ですわ……。どういたしますか?」

 エリカも万策尽きている様子で話す。
 レッドは20秒ほど黙した後にしっかりとした口調で言う。

「俺は諦めないぞ」
「諦めないって……。この四面楚歌というべき身動き取れない状態でどうするというのです?」

 エリカは珍しく後ろ向きである。一カ月近くもの間一生懸命頑張って形にした策をいとも簡単に破られて投げ槍になりかかっているのだろう。

「確かに八方ふさがりといった状況だが……。ここで諦めたら今日まで積み上げてきたことが全て無駄になる。何よりここで諦めてたら全国なんて、とても無理な話。それに……」

 レッドは口を結ぶ。

「それに……なんですの?」
「一生懸命修
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