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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第八話(下) 赤き心は挫けない
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が立っていた。
「うわっ。脅かすなよ……」
「あぁ済まないマスター」
「あら、リザードン。先ほどの歌は光源氏が須磨で詠んだとされる名歌と評判の物ですね。よくご存じですわ」
「ハハハ! 嫌だな。先生、この前古典文学全集貸してくれたじゃないですか」
リザードンは高らかに笑いながら言う。
「そういえばそうでしたわね。リザードンとしてはどの作品が一番宜しかったですか?」
このやり取りを見てレッドが口を挟んだ。
「せ、先生? お前らいつの間にそんな仲良く」
「あらスキンシップですわよ。この前私の読んでいた本に興味を示しておりましたから試しに本を読ませてみたらこれがかなり功を奏しましたわ。スポンジのように知識を吸収しますし、向学心もポケモンの中では高い部類に入ります」
「へぇ。元はオーキド博士が持ってたポケモンなだけあるな……。でもポケモンに勉強させてどうするつもりなんだ?」
「あら、ポケモンといえどトレーナーと一緒に居るなら人類の歴史や文学などの教養を身に着ける事も一興だと思いますわよ。知は力なり。きっと何かしらの糧になると思います」
「知は力ね……。まぁ何の役にも立たない事はないだろうけど」
レッドは懐疑的な視線でリザードンとエリカを見ている。
―同日 午後8時 アサギシティ ポケモンセンター―
アサギシティに戻った二人は夕食を済ませ、レッドが風呂に入った。
エリカは食器の片づけを済ませ、明日への準備を整えるとヘーゲルの本を読んでいた。
そうしていると彼女のポケギアが鳴り響く。どうやらナツメからである為エリカはすぐに出た。
「もしもし」
「あら、元気そうね」
「ナツメさんこそ。それで、どうなされたのですか?」
「どうしたもこうしたも、あんたが心配だから電話したにきまってるでしょ……。どう? レッドとは上手くいっているの?」
ナツメの質問にエリカは暫し逡巡した後に
「ええ。何とか」
と、取り繕ったかのような返事をする。
「やっぱり……何かあったの?」
「何とかと申し上げたつもりですが」
「あんたと何年付き合ってると思ってんの。声色だけであんたの本音なんか超能力使うまでもなく分かっちゃうの。で、どうしたの?」
「左様ですわね……。実は……」
エリカはナツメに昨日と今日起こったことを赤裸々に話してみせた。レッドの様子がおかしかったこと。自分を襲おうとしたこと。ミカンに負けたことなどなど……。
「なるほど……。たった二日の間にいろいろな事が起こったものね。それにしてもレッドが手を握った事もないエリカを襲うだなんて……殺してやろうかしら」
「落ち着いてください! レッドさんもその……別に私を苦しめようとかそういう意図があったわけではなく」
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