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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第八話(下) 赤き心は挫けない
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はミカンさんと戦っている時どのような局面、窮地に立たされても基本的に慌てたりせず沈着に指示を出されておりました。それに、貴方の切り札であるリザードンが倒れたときも決して責める事をせず優しく労ってさしあげてましたわね」
「そんなの、当たり前の事だろ」

 レッドは普段からやっている事を言われたので当然な風に返す。
 そう言うと、彼女はわずかに熱の入った言い方で話す。

「当たり前ではないのです。強い方、特に貴方と同じくらいの年代の方は勝ち進んでいくと傲慢になり、ポケモンを労わることを疎かにしてしまいがちな事が決して少なくありません。そのような中、貴方は年下で私も貴方も負けるとは思っていなかったミカンさんに敗北しても、自分の事のみにとらわれずまずポケモンを労わった……。それだけポケモンを大事に出来る方と共に旅出来る事が誇りに思えたからこそ、貴方ともう少し共に歩もうと思い悩みを断ち切れたのですわ」

 彼女は言い終わるとすっきりとした表情で茜色に染まりつつある南の空を見た。

「そうか……じゃあ昨日の事は」
「はい。綺麗に水に流しますわ」
「はぁ……よかった」

 レッドはその言葉を聞いて、自らの胸をなでおろす。

「しかし、だからといって次があるとは思わないでくださいませ。次されたら……そうですわね。訴訟も辞さないかもしれませんわよ。夫婦間であっても猥褻(わいせつ)系統の罪が成立する判例はありますからね」
「うう……そんな怖いことよしてくれよ」
「フフフ……。さて、これからどうなさいます? 私としては今日はアサギまで引き返し明日より水道に繰り出すのが良策に思えます」

 彼女は含み笑いをすると、いつもの柔らかな口調に戻してそう言った。

「ううん……。野宿するにもここらは砂浜でテント立てようにも億劫だし、そうした方が良いな。ところでアサギにはアサギの灯台があって修行に格好の場所とか聞いたけどどうしてそこに行かなかったんだ?」

 レッドはふと思い出して彼女に尋ねる。

「ここは源氏物語の舞台になった須磨海岸と伝わる場所なので一度来てみたかったのです。眺望絶佳と聞いておりましたゆえ期待して来ましたが予想の通り丁度いい浦風に気分を鎮まらせる波の音……。はぁ。感激ですわ」

 またいつものパターンである。好きなものに触れたときの彼女の恍惚としている表情はレッドも嫌いではなく(むし)ろ可愛いらしく思えるものであるが、言っていることが8割がた理解できないのが難点である。
 レッドは呆然としながらエリカを見ていると、どこかから吟ずる声が聞こえた。

「恋ひわびて 泣く音にまがふ 浦波は 思ふ方より 風や吹くらむ」
「あれ、聞いたことある声だな……」

 レッドはそう言いながら後ろを振り向くとリザードン
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