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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第八話(上) 苦難と心と
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にエリカは口をはさんだ。抱擁はやめて、レッドの目をしっかりと見つめて言う。
「マツバさんは女性に対して
晩生
(
おくて
)
の傾向がありますから、話す機会がなかったというだけのことですわ。連絡先を交換したのもただ単に学識を共有したいという目的のみです。疚しいことなど微塵も考えておりませんわ」
エリカはそう毅然と返す。
「本当か?」
レッドは半信半疑な心持ちで彼女に尋ねる。エリカは誤解が溶け始めている事に安堵しはじめたのか先程よりは温和な口調で
「ええ、本当ですわ」
と、微笑みながら返した。
レッドは少々黙した後
「じゃあ一つ聞いてもいいか...なんでお前急に俺に抱きついたんだ」
レッドにとってはそれが一番腑に落ちない点であった。接吻ですら強く拒んだ彼女が別れを切り出した途端に我が身を委ねるというのは彼自身の本能を擽り、本心を吐露するのをごまかそうとするエリカの算段なのではないかと疑っているのだ。
「それは、その……」
彼女にとってはなかなか答えにくい質問なのだろう。頬は紅潮し、顔の位置は変わらねど目線はレッドではなく塔の石畳に向けられている。
一分ほど経ったであろうか、彼女は口を開いた。
「貴方から離れたくなかったからです」
レッドは月並みな返答だと思うと、無言で身を翻しアサギ側へのゲートの方に向かおうとする。
すると、エリカは意を決したかのように声を上げて言う。
「そうでもしなければ、貴方を引き止められるとは思えなかったんです!」
レッドはその言を聞くとゲートに向かっていた足を止める。そして、エリカの方に顔だけ向き直る。
彼女の目には恥じらいのせいかそこまでしないとレッドを止められない自分への情けなさか、涙が溜まっていた。
「その……貴方は思春期……ですものね。その齢の殿方は異性に対する興味が非常に高いと聞きますし、実際に貴方の行動を見るにそれを表す行為は見られました。ですから、貴方が欲していると思われるですね……その……」
レッドはそこまでエリカの言葉を聞くと手で制した。
「分かった。もういい。お前の気持ちは十二分に伝わった」
と言って、エリカの少し前に立つ。
「あ……貴方?」
「ちょっと意地を張りすぎたな。お前に言い負かされっぱなしの気がしてさ。言われっぱなしなのも悔しいから、ちょっと試してみただけだ」
そんなレッドの言葉に対しエリカは驚いた表情を見せ
「あぁ。左様な事でございましたか……。安心致しましたわ。貴方がそんなつまらない事で責め立てをなさるような人でなくて」
「おう。だが、最後、お前が口ごもった言葉……。忘れるなよ。じゃあ、アサギに行くか」
エリカはほんのりと頬を赤く
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