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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第七話 大姦の蠢動
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る最中に激震が襲い、バクフーンは不意を突かれた格好で耐え切れずに地に臥せた。

「ここは安易にいかない方が良さそうですわね……。ルンパッパ、トドゼルガからギガドレインです!」

 エリカは持久戦に持ち込もうと考えたのか、体力回復を優先すべくトドゼルガより体力を吸い取る。
 大いに効いた様子だが、ダメージは体力にして三分の一。やはり一筋縄ではいかない。
 そしてレッドはあと一体という状況に愕然とする。ここでもし倒れれば、自らの不敗伝説に終止符が打たれてしまう。
 そんなレッドを見たヤナギは語りかける。

「どうした、レッド。怯えとるのか……かつてない劣勢に」

 ヤナギは再びレッドを呼び捨てにした。その上、氷柱(つらら)針で突き刺すかのように、冷厳な言葉を放つ。

「……ッ!」

 レッドは歯を食いしばり、身を硬直させた。ヤナギの言葉が金縛りに近い感覚が襲ったのだ。

「その顔は敗北というものを知らぬ顔じゃな。ここまで常勝不敗で来たのじゃろう。だがの……」

 ヤナギはまだ何か言うことが残っていそうだったが、一考したかのような仕草をした後

「いや、凡百の言を連ねるよりは、自らの身に直截(ちょくせつ)刻み込ますほうが近道かの」

 
「貴方……」

 エリカは、不安になり始めたのか、レッドの一挙一動を細やかに追い始めているように見える。

「行け! リザードン」

 レッドは今の状況を最大限活用しようと、炎ポケモンを出して正攻法で片付けようとした。しかし

「月並みじゃ……失望したの。幕を下ろせ、マンムー。ストーンエッジだ」
「御意!」

 リザードンはモンスターボールから出た瞬間、尖った岩塊の洗礼に遭う。四倍に加え岩の大技である。リザードンは耐え切れずに咆哮をあげる間も無く地に降りる。
 レッドは旅をしてから、(やや)もすると一生の間で初の敗北を喫した。
 自らに起こった未経験の事態に出来た事といえば、(うつ)けたように立ち尽くす事のみであろう。

「エリカ女史。これでは勝ち目は無いの、それが分からぬほど愚かではなかろう」

 いくらエリカといえど、残りの草ポケモンで残り5体の氷ポケモンに打ち勝つことはほぼ不可能である。弱点を突いたとしてもユキノオーのように草に抵抗力があるポケモンが出てしまえばそれまで。
 彼女自身もそれをよく分かっているのか、黙ってルンパッパを戻す。

「それにしても、君には落胆した……期待したほどの実力ではない。力押しだけのなんの面白みもあったものではない。一言で言えば、無味乾燥だの」

 そしてヤナギは憮然(ぶぜん)とした様子で、抑揚も無く、淡々とした様子で言う。しかし、それが尚更悔悟の念を、そしてレッド自身の情けなさを増幅させた
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