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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第四話 氷鳥と黒白の衣
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―2月14日 午前10時 29番道路―

 最初のポケモンを受け取った二人は、いよいよ29番道路で全国の旅の第一歩を踏み出す。
 この日は北風が吹き、真冬らしい気候と言えど、空は青く澄んでいた。

「いよいよ、始まりか!」

レッドが晴れやかに言うと、エリカはレッドの目をしっかりと見つめて

「私はこれからどのような事があろうと貴方と一蓮托生の覚悟で、生死をともに致しますわ!」

 と、半ば大げさな事を言ってのけた。これにはレッドも若干たじろいで

「縁起でもないこと言うなよ……でもそれは大事なことだよな。それにしても、さっき気になったんだけどさ……」
「ウツギ博士の事でしょうか?」
「いや。違う、お前だよ。どうしてアサギの時、ウツギ博士をかばうような事したんだ?」

 レッドにとって、自分よりも長くポケモンと一緒に居る人がポケモンと離れる事に賛成しなかったことが不思議だったのだ。

「ああ。それについてはですね、一種の賭けのようなものですわ」
「賭け?」

 その単語に引っ掛かったのでレッドは注意しながら訊く。

「はい。ポケモンリーグから来るはずの手紙がオーキド博士から来ている……。手紙もあのように尤もらしく言い繕ってはいますが、ポケモンマスターは条件から鑑みれば強さを示す証。要は戦術、戦略が物を言う訳ですから、長年の相棒と別れる理由には成り得ませんわね」

 エリカは次々と一連の事象に対する私見を述べる。激情に駆られていたレッドには気付かなかったことなので、彼はまたも感心していた。

「ですから、この一件はオーキド博士の狂言ではないか……という結論に至り、狂言ならば戻ってくる公算が高い為、敢えて乗った訳ですが……思わぬ肩すかしを喰らいましたわね」
「おおなんと大胆な……。にしてもオーキド博士が嘘を? 一体何の為にさ、俺たちのポケモンを用いて何かしようってのか?」

 レッドからすればオーキド博士はポケモンをくれた恩師である。

「さあそれは分かりかねますが……。何はともあれ、こうしてポケモンを渡すことなく進める訳ですからウツギ博士には感謝しなければなりませんね」
「そうだな。にしても良い空だ! 思えば神様が味方してくれたのかもな」

 彼は大きく気持ち良さげに伸びをしながら言った。

「天佑と言われますか……。そうですわね。今回はそう思う事に致しましょう」

 エリカは餅でも飲み込むかのように苦々しい顔をしながらも、そう言って納得するに至った様子である。

「ところで、野生のポケモンが出てきたらどうする?」
「どうするとは? まさか修行のし過ぎで普段の戦い方をお忘れになられたのですか?」

 彼女は警戒しているのか恐る恐るレッドに言う。その様はなんとも愛おしい。

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