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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第一話 月日は百代の過客にして行きかふ年もまた旅人なり
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服姿ではあるが小柄な顔立ち、紫色のカシューチャ、そしてなによりも彼女自身が放つ清らかな雰囲気でそれが誰かレッドに分からせるには十分だった。

「流石ですわね。伝説のポケモントレーナーという筋書きは嘘じゃないって事ですか……」

 その女性はレッドの前で立ち止まる。

「エリカ……さん?」

 レッドは久々の思い人の再会に、内心を大いに喜ばせる。

「そうです、タマムシジムリーダーのエリカです」

 彼女はわざわざ所属まで言ってきた。相変わらずの律儀ぶりである。

「なんでこんなところにまで……」

 レッドは次に湧いた疑問を彼女にぶつける。

「セキエイリーグから連絡があるのでお伝えに来たまでです。何かワタルさんが、企んでるようですわね」

 エリカは含みを持たせた口ぶりでそう言った。

「ワタルさんかぁ……懐かしいですね」

 レッドは数年ぶりに聞くその名に懐かしみを感じていた。

「しかしワタルさんも酷な事をさせるねぇ、か弱い女性に山を登らせるなんて」

 レッドは何の気無しに、単にエリカを労うつもりでそんな事をいった。
 しかしエリカの反応はレッドの予想を良くも悪くも裏切るものだった。

「……レッドさん、随分鈍くなられましたわね……」

 エリカは帽子を改めて目深にかぶり、静かにレッドをけなす。

「……え?」

 レッドは思わず聞き返す。

「本来は、私ではなくタケシさんが使いで来るはずだったのです。それを私が無理して変わって頂いた……、こ、ここまで申し上げても、私の本意、察していただけないのですか?」

 最後は流石にエリカも恥ずかしくなったのか頬を赤らめながら言った。
 そこで漸くレッドは、三年前エリカに何を言ったのか思い出したのだ。
 それと共に忘却の彼方にあった情欲、煩悩が沸騰し、突沸しだした湯の如く湧き出し始める。

「え、エリカさん。貴女もしかして……」

 レッドは二の句を継ごうとしたがエリカが先に言う。

「告白のお返事、しておりませんでしたわね。……私も、ずっとお慕い申し上げておりました」

 エリカは相変わらず顔を赤らめていたが、最後はきっちりと言い切り、笑みを浮かべている。
 その笑みには穢れが無く、清く明るいものである。

「……、エリカさん、僕……僕……!」

 エリカを抱きしめようと手を伸ばした。
 しかし、

「レッドさあああああん!!」

 さっきの少年が懲りずにまた来たようである。

「うう、こんなタイミングで来んなよ!!」

 レッドは呆れ半分にそう言った。

「仕方ないですわね……戦っておあげなさい、それが貴方のトレーナーとしての責務ですから」
「はいよ……。んじゃ、一丁やりま
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