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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第〇話 黎明
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、コーヒーに手を付けていたナツメが吹き出してむせた。

「だ、大丈夫ですか?」

 エリカはコーヒーの飛沫を軽く拭いた後、身を乗り出してナツメの身を案じる。

「ケホッ……。あ、ありがと。って、あんたまだジムに一回来ただけの子の事、気にかけてんの?」

 ナツメは怪訝な表情をエリカ当人に向ける。

「惜しい、正確には二回ですわ。それに、類を見ない速さでロケット団を壊滅させ、その上リーグのトップに立たれたお方ではないですか。ジムに挑戦しに来ただけの普通のトレーナーと同一視するのはレッドさんに失礼というものです」
「ハァ……そういえば告白されたとか言ってたわね……。それでもおかしいわよ、それだけの事でまるで……」

 そこまで言うとナツメは口ごもる。

「まるで……なんですの?」

 エリカの勧めにナツメは赤面しながら、押し出されるかのように言う。

「こ、恋心抱いているみたいに気にしているだなんておかしいわよ!」

 ナツメの突然の金切り声に他の客は一斉に二人の机に注目する。

「ナツメさん。少々お声が……。しかし、なるほど恋心……ですか。確かに似たようなものは抱いているかもしれませんわね」

 エリカは顎に手を遣って熟考のポーズをとる。

「っ……! 否定くらいしなさいよ。それにレッドは修行してるんだろうから、防寒用具はさして持って行ってないと」
「そんな! 凍死したらどうするのですか!? 何とか修行場所を特定して、そこまで荷物を……。そうだ、ナツメさん貴女のテレキネシスでどうにか」

 エリカは半ば錯乱気味にナツメに対して提案する。

「ちょ……なんでレッドなんかの為に面倒な超能力を…… って、そうじゃなくて……あんた本当にあいつの事」

 ナツメの疑問に対し、エリカは数秒の間を置いたのち

「よくよく考えてみればもしかすると、レッドさんは私の理想とする方なのかもしれませんわね」
「どうして? あんた、バカは蛇蝎の如く忌み嫌っているのに……。あの子小卒よ? 強いけど、特別学があるようには思えないし」
「私の本当に理想とする男性というのはこれまで一人としてお会いしたことがないのです。しかし、レッドさんにはそういう……可能性というものが感じられるのですよ」

 彼女は神妙だが、どこか確信をもったかのような口ぶりで話す。

「ふうん……。そうなの」

 ナツメは気丈そうに言葉だけは取り繕うも意気消沈したかのように項垂れる。
 そんなナツメを見て、エリカはまずいと思ったのか話題を切り替える。

「そ、そういえばこの前のジョウトカントー間での親睦会でアカネさんとマツバさんがツクシさんに勉強を教えられておりましたわよ。アカネさんに私も引っ張られて化学を少々お教えしましたけど」
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