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伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚
第〇話 黎明
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たような表情で彼に尋ねる。
「あの、エリカさん。驚かないで……しかし真剣に聞いてくださいね」
「は……はい」
レッドがにわかに真剣な表情になる。彼女自身からすれば意外に思ったのかはたまたおどけて見せているのか眉をかすかに動かした後身を正して聞く姿勢になる。
「僕は……その、エリカさんと違って小学校を出ただけだし、エリカさんの理想とする男性とはほど遠いかもしれない。でも、僕はこうしてカントーの頂点に上り詰めることができたんです。そして貴女を想う気持ちには誰にも引けはとりません。初めて会ったときからエリカさんの事が大好きです!」
レッドは顔を紅潮させながらも最後まで言い切った。
暫しの沈黙が流れる。エリカは最初は少しだけ身を動かしたが、すぐに元の悠然とした態度に戻る。
そんな泰然自若とした態度が尚更レッドを惹かれさせた。しかし、レッドは必ずしもエリカの返事を期待していた訳でもなかった。
「……、僕が言いたかったのはそれだけです。シロガネ山に行く前に、これだけはどうしても伝えたかったんです」
重い空気を破ったのはレッドだった。
エリカは敢えて告白の返事はせずに言葉を返す。
「何故、シロガネ山に?」
「チャンピオンになった以上、カントーで僕に勝てる人はいない……。それは要するに成長を止めることになるじゃないですか。でも、ジョウトとカントーの境目にある大山、シロガネ山に行けば更に修行を積むことができて、心身ともに修練を積める……、そう思ったからです」
その言葉を聞くと、彼女は大きく息をつき、感心している様子である。
「頂点に立ってもなお、一層高みに立とうとするその御姿……、素晴らしいですわ。模範にしていきたいですわね」
「……、その前にエリカさんに一言思いを伝えに来たのです。それじゃ、エリカさん体にだけはお気をつけて……」
そう言ってレッドは全てを断ち切るかのように後ろを振り返って、タマムシジムを去った。
――――――――――――――――――
―2012年 9月29日 午後9時 マサラタウン オーキド研究所―
昼時は慌ただしい研究所も夜となれば静まり返る。
研究を残している者もこの時間になるとほとんど帰宅し、今残っているのは研究所の長・オーキドのみであった。
オーキドは机に向かい、全国版仕様のポケモン図鑑の設計書を描いていた。
そんな中、研究所のドアが開く。
「……」
オーキドはそんな音など意に介さず万年筆を執り続ける。
コツコツと革靴の音が研究所に響き渡る。
やがて、靴音はオーキドの座る椅子の前で止んだ。
それを察したオーキドは漸く筆を置いて起立して来客に向き合う。
「ホッホ。よく来たの」
「……」
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