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赤い靴
1部分:第一章
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ウム真理教の事件を大きくさせた一因になってしまったのは深刻な話であるが。
「それに赤いのを狙う団体って」
「ないだろ、まず」
「ですよね。聞いたことがありません」
 その可能性も今消えたのだった。
「では一体」
 それでも話は続く。
「何者なんでしょうかね」
「さてな。人間だったらいいけれどな」
 松本は首を捻ってからこう述べた。
「人間じゃないって。妖怪か何かだとでもいうんですか?」
「あの歌あるだろ」
 言うまでもなく赤い靴の歌である。松本も金田もそれを連想していたのだ。
「あれ聴いていてそんな感じしないか?さらってるのは」
「確かにまあそうですけれどね」
 そして金田もそれに頷くのだった。言われてみればそうだ。
「けれどそれはないでしょ」
「常識に考えたらな。もっと怖いのかも知れないしな」
「妖怪よりもですか」
 それを聞くとさらに訳がわからない。だが薄気味悪さで背筋が凍る思いも感じる。その嫌な感触が背筋を撫でて金田はそれで顔を暗くさせたのだった。そのうえで松本に問う。
「じゃあ何なんですか?」
「さあな。それだな」
 ここで松本はまた彼に言う。
「俺と御前でその犯人を捜すことになったぞ」
「俺達ですか」
「そうだ。御前ヒマだろ?」
 身も蓋もない問いであった。
「だからだよ。俺もヒマだしな」
「ヒマ、だからですか」
「空いている人間に仕事を回すもんなんだよ」
 それがお役所というものだ。結局のところ警察もお役所なのである。いいか悪いかは別にしてそれで今回二人が担当になったのである。
「わかったな。それじゃあな」
「早速仕事ですか」
「ああ。まずはだ」
 コーヒーの残りを一気に飲み終えてからあらためて金田に告げた。
「目撃現場の見回りと事情聴取からやるぞ」
「目撃現場ってヒバゴンか何かみたいですね」  
 広島に出るという謎の猿人だ。その正体は今も不明である。
「ヒバゴンが街に出るか?山だろ」
「まあそうですけれど」
「だったら関係ない。俺達が行くのは街だからな」
「わかりましたよ。じゃあ」
 こうして二人は捜査の第一歩として目撃現場の見回りと目撃者からの事情聴取に当たった。その結果わかったことは大体の事件と同じようなものであった。
「ええと。目撃時間は大抵夕方から夜ですね」
「ああ」
 二人は刑事課に戻って話を再開していた。もう夜なので夜食を食べながらだ。松本は丼からラーメンをすすり金田はコンビニの弁当を買って食べている。そうしながら話していた。
「出るのは街角が多いですか」
「変質者みたいだな」
 松本はそれを聞いてラーメンをすすりつつ呟いた。
「そこだけ見たらな」
「その変質者の可能性ですけれど」
「あると思うか」
「どうでしょうかね」
 一
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