第6章 流されて異界
第129話 白昼夢
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に霊場特有。それも、怨みに染まった悪霊が無理矢理、封じられているような気配は感じない。
確かに最初の死者が出た段階で、この場に封じられて居た何モノかが解放された可能性もありますが……。
過去視の類は……かなり難易度の高い卜占系の術の中に有る。その術で一九九八年の事件当日の夜を覗く事は可能ですが、それは結界や異界化現象を越えて、その内部を覗く事が出来る術式と言う訳ではないので……。
「でも、その伝承とは違う話が高坂の家には伝わって居ます」
このルートから事件を探るのは無理か。そう結論付けようとした俺。しかし、そんな俺の諦めにも似た考えに待ったを掛ける弓月さん。
そして、改めて石碑を見つめ、
「この石碑は庚申塚だと言う話です」
……と言ったのだった。
庚申塚。実物を見るのは初めてだが、知識としてなら持って居る。確か、普通の庚申塚には銘文と彫刻。例えば、三猿や、青面金剛、猿田彦などが刻まれている事が多いはず。
尚、庚申塚とは……。
人間の身体の中には三尸と言う虫が棲んでおり、庚申の日の夜、寝ている間に天帝にその人間の悪事を報告しに行くとされていた。
まぁ、大抵の人間は、人に知られたくない悪さのひとつやふたつは行って居る物で、それを避ける為として庚申の日の夜は夜通し眠らないで天帝や猿田彦、青面金剛などを祀り、勤行をしたり宴会をしたりする風習があった。
これが『庚申講』と言うヤツ。古い時代を舞台にした小説などでは時々、目にする内容でもある。俺が最初にこの言葉を知ったのは平安時代を舞台にした小説だったかな。
それで、この庚申講を三年、合計十八回続けた記念に建立されるのが庚申塚。塔の建立に際して供養を伴ったトコロから、庚申供養塔とも呼ばれる事もある。
ただ、庚申塚か……。
「有希、三尸虫を呼び出してみるか」
成功する可能性は限りなく低い。そもそも、その三尸が必ず塚に存在している訳ではない、と思う。仮に存在して居たとしても、召喚に応じる可能性がどれぐらいあるのかも分からない。
それに、俺はこの三尸召喚を実際に行った事がない。飽くまでも知識として知っているだけ、のレベル。何故ならば、俺に三尸を召喚する術は必要がなかったから。相手の発して居る気配を読めばある程度考えている事が分かるし、事件を起こした癖に、白を切り通そうとする犯人を追いつめるような類の事件に巻き込まれた事もなかったから。
どちらかと言うと、最後は力でねじ伏せる腕力勝負の事件にばかり巻き込まれて来ましたし。
但し、成功した場合は……高坂家の知られたくない過去が暴き出される可能性はある。が、それでも、この何の銘文も刻まれていないこの石碑の意味と、そして、今起こりつつある事件の裏側が分かる
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