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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第129話 白昼夢
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「ちょっと待ちなさいよ」

 愛用の笛を取り出し、今まさに土地神召喚の術式を起動しようとした瞬間、勝手に付いて来た員数外が割り込んで来る。
 その瞬間、俺の右側に立つ少女が、何故だか少し不機嫌だ、……と言う気配を発した。

 冬至の氷空(そら)にある太陽はその身を中天に据え、奥羽山脈を越えて来た冷たい、乾いた風が、ここが俺の暮らして来た西日本とは違う地方だと言う事を如実に主張している。
 表面上は平和で穏やかな週末のお昼過ぎ。図書館や博物館などが併設される公園は市民の憩いの場として利用される事が多く、ここに到着するまでの間にも、今年より学校が週休二日制へと移行した関係から、多くの子供たちの姿を確認する事が出来た。



 十二月二十一日。襲撃の夜が明け、俺たちが受けた被害が確定した。
 謎の襲撃者。犬神使いが放った常識外れの数の犬神。そいつらに襲撃された温泉旅館の関係者に、しかし、人的な被害はなし。そもそもヤツラの最初の狙いは弓月さんの従姉だけ、……だった模様で、彼女を守り切った段階で俺たちの勝利に終わったと言う事なのでしょう。
 その点に関して言うのなら、なのですが。



「その芸は昨夜見たから、他の芸はないの?」

 何の脈絡もなく無茶苦茶な事を言い出す、何時ものリボン付カチューシャで長い黒髪を纏めた少女。かなり強い瞳。万人が……と言うと言い過ぎか。少なくとも俺の目から見れば、かなりのレベルの美少女と表現しても問題はない相手。
 その恵まれた容姿。押しの強い性格。はっきり言うと、コイツはもう少し男子生徒たちから人気が出ても良さそうなのだが、その妙な方向に突出した行動力と、宇宙からか、地底人からの毒電波を受信し易いオツムの所為で、非常に残念な評価の方が勝って居る少女。

 あまり見慣れていない私服姿の彼女。そのスカートの裾を北からの風に揺らし、振り返った俺の視線を独り占めにした少女が、厚手のダウンジャケットの前で腕を組んで睨み返している。
 コイツ、どうでも良いが、俺相手だと妙に高圧で威圧感を発しているのですが……。ただ、そこまで気張らなくても、普通に話し掛けてくれば普通に答えは返すぞ、と言う気分なのですけどね。
 昨夜、俺の腕の中に居た時とはまるで別人。あの時は非常にしおらしい……少なくとも俺の事を考えてくれていたのに、今の態度は……。

 昨夜、このよく分からない事件の首謀者と思しき犬神使いに攫われた後に俺に奪還され、その後に俺と、その犬神使いとの戦いを特等席で目撃する事となったハルヒ。
 流石の彼女も、あの不思議体験。――いきなり壁抜けで現われた人物に攫われた挙句、地下を飛ぶように移動。その後、大量の土砂と共に夜空に放り出され、其処で人間の盾として使用される。
 そして、俺に救出された後に術者
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