暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
掛け違えた祈り
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
しませんように。
 『お前に名前を。俺を呼べ……アリア』
 アリア。
 名無しの子供に与えられた、名前。
 偽りの女神の名前。
 アリアは一度ぐっと目蓋を閉じ、唇を噛み締めた。
 立ち上がり、涙を振り払って視界を広げ、廃墟と化した神殿を見据える。
 昔、人と神々を繋ぐ巫の一族が住んでいた場所。幼いアリアが村人に拾われた場所。
 ……此処から始める。此処から変えていく。創造神アリアは此処で声を上げる。
 どうか、世界中の生命が慈しみと優しさで満たされますように。
 「私は創造神アリア。この世界を護る者。導く者。力を貸して! 私の契約者レゾネクト!!」
 アリアの全身から紫色の光が放たれる。
 夕暮れにも似た澄んだ紫の光はアリアの体を離れ、一歩手前の空間に若い男性の体を顕した。
 「……叶えてやろう、アリア。お前の願い、お前の望み。お前の道は俺が示してやる」
 聞き慣れた声の初めて見る姿はとても美しく、何処か虚ろで。
 それでも、差し出された手を握り返せば、少しだけ温かく感じた。

 アリアは願うままに世界を跳ぶ。
 やがて、女神アリアが統一した世界も自分の一部だと解釈できる……そう気付くまで。
 導き手であろうと本心から願って。
 懸命に、跳び続けた。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ