掛け違えた祈り
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、私を追い詰める。
「クロス、ツェル」
レゾネクトの腕の中から、クロスツェルに目を向ける。
私が苦しめてしまった、小さな小さな少年。
貴方みたいな人が生み出されないようにって……
ずっと……そう、思って、いたのに……。
「……ごめん、……な、さい……」
私こそが、すべての罪の根源。
貴方は何も悪くない。
悪くなんてないのよ、……レスター……
どうして殺し合うの。
どうして奪い合うの。
どうして壊そうとするの。
無い物なら、皆で作れば良い。
足りない物なら、皆で補い合えば良い。
助け合って、支え合って。苦しみも悲しみも、喜びも分かち合って。
皆で一緒に頑張れば良いだけじゃない!
どうしてそれが受け入れられないの!?
何が人間を分けて、潰し合わせようとしているの!?
どうして、隣に居る人の手を取って笑い合うことすら拒むの!?
子供は吼える。
何も答えない虚ろな空間で、ただただ吼え続ける。
自我を持った時に親はなく。
何者とも知れぬ赤子を育てた心優しい老夫婦は、盗人達に殺された。
育てた家畜や野菜や果物は根こそぎ奪い去られ。
わずか数十人が身を寄せて暮らしていた小さな村も無情に焼き払われた。
命からがら、安全な場所へと逃げ延びた幼い子供は。
老夫婦から聴かされていた世界の形を思って、嘆く。
かつて全世界を震撼させていたという脅威は、既にない。
世界中の誰もが、解放の喜びに満ちている。
ならば、何故?
どうして、人間同士で争っているのか。
幼い者や老いた者を見下し。
皆で共有していた領域を占拠しては、自分の物だと主張し。
他人が愛情と手間暇を掛けて作り、育てた物を、横から平然と奪い取る。
子供には、その行動と思考が理解できない。
だから、問い続けた。
泣きながら、世界に吼えた。
『なら、お前が世界を導けば良い』
子供にだけ聴こえた声が、子供の叫びをピタリと止める。
よく知った声。
数年前から聴こえる……
落ち込んだ時も笑っていた時も、ずっと一緒に居てくれた不思議な声。
『護りたいものを護れば良い。俺を呼べ。お前が望む世界を与えてやろう』
「……レゾ……」
男の声はずっと、子供に甘い言葉をささやいてきた。
そう思うなら、そうすれば良い。
願うなら、願うままに行動すれば良い。
そうやって不気味なほど静かに、子供の心を揺さぶり続けた。
子供は、それを拒んできた。
この声はきっと、良くないモノ。
決して耳を貸してはいけない。頷いてはいけない。
そう、頭の奥から感じる警告に従って、頑なに拒絶し続けた
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