掛け違えた祈り
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「敗戦国の政治体制は各国の主張合戦が長引いたせいで余計な空白を作り、その分の生活負担は、ほとんどそのまま、国民が背負っていた。それでも、アリア信仰の絶え間ない支援のおかげで生き残れたのだと、教皇のおかげで乗り越えられたと本気で信じている者が山ほどいる。どう思う? アリア」
レゾネクトが笑う。
私を責めるように、目を細めて首を傾げる。
「…………っ」
もっと他に、違うやり方があった筈だと思っても、言葉にはできない。
だって、そうなったのは。そう、させてしまったのは。
「お前が逃げたせい、だよな」
震える顎を掴む手が、喉にするりと下りる。
くっ……と軽く押さえられて、違和感を覚えても動けない。
体が震えて、動かせない。
「俺達が悪魔退治に乗じて掲げていた教義は、お前自身が人間の目に見える場所に居てこそ成り立つ物だった。お前が人間世界から姿を隠してしまえば歪みが生じるのは当然だ。現代のアリア信仰はお前が歪ませた教えを正しく守ったにすぎない。現代の代理人は、女神アリアの意思を正しく遂行した。つまり、お前がレスターを」
「やめて……」
聞きたくない……
「お前を敬い、心から愛していたクロスツェルを」
「いや……っ」
聞きたくない! 聞きたくない!!
「罪人にしたんだ」
「やめてぇええ────っ!!」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!
「耳を塞ぎ、目を閉じて。そうやってまた逃げるのか? お前の願いから。自分が犯した過ちから」
力を込めて頭を振る。
レゾネクトの手が離れた隙に地面に伏せて、耳を隠し、声をさえぎる。
……解ってる。
全部、私が悪いんだって、解ってる。
けど!!
「アリア。お前の信徒達は、本当によく理解している。一度始めたことは、最後まで責任を持ってやり通さなければならないと。プリシラも言っていただろう? 傍観者に徹するなど論外、形だけ通して終わりだなどと思うな。お前は世界を創造した女神アリア。お前の存在で、争いを無くすんだ」
できない。
そんなこと、できるわけがない。
私がこれ以上契約を進めたら、世界が壊されてしまう。
この『 』に、本当に壊されてしまう!
だから、私は……っ
「アリア」
立ち上がったレゾネクトに両の二の腕を掴まれて、無理矢理立たされた。
そのまま頭を抱える格好で抱きしめられ、抵抗も叶わない。
「俺の可愛いアリア。さあ、あの日の願いを叶えろ。お前の力で大切な者を護ると良い。クロスツェルもベゼドラも、世界も。お前が愛するすべてを」
レゾネクトの手が髪を撫で、絡めた一房に口付ける。
……貴方は……いつもそうやって
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