掛け違えた祈り
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その姿勢が、支配層への敵対行為と受け取られてしまう。
国民の多くが少なくない感謝をアリア信仰へ向けるのも、彼らにとっては危機的な状況で。
結果として、国民の不信を買った彼らの選択は、武力を用いた反乱分子の抑圧と排除だった。
支援活動の為に訪れたアリア信仰の神父達から、物資だけは掠め取り。
自国民の前で吊るし上げては、侵略者の公開処刑と称して次々と殺し。
アリア信仰の施しを受けた者は彼ら同様に処すと、大々的に声を広めた。
それで大人しく涙を呑んだ者が多くいたのも確かだが。
堪え忍んで精一杯生きてきた民の怒りに火を付けたのも事実だ。
『お前達が、私達に何をしてくれたと言うのか!』
そうして怒り狂った民が決起し。
支配層と一般層が割れたところから、悲劇が始まる。
アリア信仰に手を上げたと、後ろ楯の国々も剣を抜き。
交易路の新規開拓……
要は、将来的な商業利権を狙った第三国までが人道保護を唱えて介入し。
敵味方関係なく武器を売り捌いて稼ぐ商人や、戦場泥棒まで現れる始末。
もはや内乱で治まる様相を遥かに超え。
気が付けば、救おうとした筈の国々を中心に、血生臭い戦場が世界各地で展開されていた。
アリア信仰の支援から端を発した、五年にも及ぶ世界大戦は。
混乱の最中、彼の王国の弱体化した支配層の首を捧げた中間層の投降で、一応の落ち着きを見る。
が、ろくな将来図も無いまま指導者が空位になってしまったのはどうにも政治的に間が悪く、首を取ったのがアリア信仰に改宗した信徒、というのもまた、敗戦国側の立場からすれば、頭を痛める大問題だった。
『創造神による粛清と勝利』
アリア信仰に肩入れする形で参戦していた国々が。
『創造神のご加護』を免罪符として利用し。
敗戦国への内政干渉を、誰の目を憚ることもなく堂々と始めてしまった。
複数の国が、それぞれの思惑に則って、様々な主張を押し付け合い。
現地民の疲弊などには目も向けず、利を削り取っては自国へ持ち帰る。
その姿は、水飴に群がる蟻さながらだった。
この時点でアリア信仰の頂点にある者としてレティシア教皇ができたことと言えば、戦争の終結を宣言する……だけ。
長期戦の間にかすれた教皇猊下による親切の押し売りで始まった真相は、当時のアリア信仰を支えていた各国の次期大司教より上位の重役達によって隠蔽され、それなりに老いた現代の司教達でも記憶している者は多くない。
一般に語られるのは、アリア信仰が貧困に苦しむ人々を助けた事実のみ。
実際、最初に救おうとしていた彼の国の民ですら、多くは真実を知らず。
現在でも、レティシア教皇の行いに深い感謝と敬意を捧げている
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