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SNOW ROSE
間章U
想いに咲く花
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れるクラーケンが住み着いているのである。
 それはクレープスも知っていたが、それを恐れることもなく、島へ渡ることを彼は即決したのであった。

「フィルッ!船を出してくれそうな船乗りはいたか?」
 遠くから駆けてきたフィリップにクレープスが問った。
 ここは海辺の街ヴィス。女神の島へ渡るには、この街からが最短距離なのである。しかし、誰一人として船を出したがらないため、彼らは四苦八苦していた。
「クレープスさん、やはりダメです。この街でもクラーケンに三人拐われているそうで、船は出してくれそうにありませんよ。」
 フィリップは随分と駆け回ってくれたよう、汗だくで言ってきた。
 そんな彼の労力も、終始無駄に終わっていたのであった。
 この街に着いて、もう七日経とうとしている。かなり大きな街なので、最初は直ぐに見つかるものと考えていた二人は、自らの甘さを痛感させられていたのであった。
 仕方なく、二人は近くにあった木箱を椅子がわりに腰を下ろし、少し休憩することにした。
 暫くすると、そんな彼らの前に一人の青年が姿を現した。
「なぁ、あんた方が女神の島に渡りたいっていう旅の人かい?」
 よく焼けた小麦色の肌、鍛練された体つき。二人は目の前の青年が船乗りであるのだと、その姿を見て直ぐに分かった。
「ああ、その通りだが…。君は?」
 クレープスは青年を見上げ、そう問いかけた。
「俺はこの辺の船乗りで、名前はリト。あんた方が船を探してるって聞いてね、気になって来てみたんだよ。」
 リトはそう言うと、自分も木箱を持ってきて彼らの傍に座った。
「この辺りじゃ、魔物が住む海域なんぞに船出す船乗りはいない。そんなことも知らないで着たのか?」
 二人は苦笑いするしかなかった。全くその通りなのだから。
 しかし、この青年は何が目的で訪ねてきたのか…。クレープスは気になっていたが、考えても仕様のないことでもあり、思い切って青年に話を持ち掛けた。
「ここで会ったのも何かの縁だろう。私の名はクレープス。そして、こちらはフィリップだ。良かったら力を貸してほしい。私達は、この辺のことには疎くてね…。」
 クレープスがそう頼むと、リトは意外なほど簡潔に答えてくれたのであった。
「俺が船を出してやる。」
 予期せぬ答えに、クレープスもフィリップも目を丸くしてリトを見た。
 名のある船乗り達ですら怖気づいたと言うのに、この青年は自ら船を出すと言うのだ。
 二人はこの青年を信頼して良いものかと顔を見合わせたが、他に良い手立てがあるわけでもなく、目の前の青年に頼むことにした。
「それでは頼みたい。かなりの危険を伴うのは百も承知だ。君に対しての報酬は、どれ程支払えば良いものだろうか?」
 クレープスは支払いの交渉に入ろうとしたが、リトは首を横に振ってそれ
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