第八十八話
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今までありがとう――とAA−12に感謝しながらも、素早くストレージを操作して、先程回収していたリーベのナイフを取り出した。威嚇するようにリーベに向けるものの、リーベも種が尽きたのか何もしようとせず、ボーッと瓦礫の山に立っているだけだった。
――視線はこちらを、熱っぽく見つめていたが。
「……リーベ?」
「ああ……凄いねショウキくん。こんなにいろんなキミのために用意したのに、ぜーんぶ無駄にしちゃって」
まるで、頑張って書いたラブレターを目の前で破られちゃったみたいな、そんな気分――とリーベの独白は続いていく。そしてやはりどこからか、自分が今持っているものと同じナイフを取り出すと、俺と鏡あわせになるようにこちらに向ける。
「ありがと好き助け楽しかったずっとこうしてたい! ……じゃあね!」
そしてリーベは俺の胸に飛び込んでくるように跳ぶと、同じナイフを構えて交錯する。心なしか動きが鈍い彼女に対して、こちらも真正面からナイフを突き立てようと――
「…………ッ!?」
――突き立てようとして。俺の身体から力が抜けて膝をついてしまう。慌てて自分のHPゲージを見ると、気づかぬうちに状態異常になっていることを示すゲージへと変化していた。あれほど強力ではないものの、本物の《死銃》にやられた麻痺状態と同じような状態で、動けなくなるのが一瞬だろうとこのタイミングでは致命的……!
「――ショウキくん知ってた? 爆弾の中には、火をつけると有毒ガスを発生させるものがあるの」
リーベのその言葉で俺は彼女の作戦のことを悟る。《炸裂装甲》や先程の言葉の羅列の演技は、この状態になることへの布石。そしてこの状態になったのは、火をつけたら煙が出る物体――ネズミ花火だ。リーベが戦闘の最初に放ったネズミ花火から発された毒の煙が、俺の身体を少しずつ、少しずつ蝕んでいき……今、その状態異常は俺に襲いかかった。
リーベも同じ状態になった筈だが、こちらに比べて症状は軽い。その証拠に彼女は、俺の手がない左側へとそのまま駆けていった。
――安全ピンが抜けた手榴弾を俺の前に置きながら。
「ばいばい、ショウキくん」
「――――!」
彼女から別れの言葉を告げられて、手榴弾が爆発するまでの一瞬。その一瞬だけだったが俺は思考をフル回転させ、この事態を挽回する方法を思索する。周りの情報と自分が取れる選択肢、それらが脳内でシュミレートされていき……そのどれもが実現不可能だと結論づけられる。
それでも。まだ俺のHPは0になってはいない。まだ負けちゃいない、まだ生きている、まだ――
「――生きてるうちは負けじゃない……!」
――そして左手に『熱』が込められる。
爆発して無いはずの左手に、感じるは
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