第八十八話
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煙に紛れてリーベは姿を消し、見失った俺はとにかく一つの場所に留まらぬよう、瓦礫の雨に当たらないように逃げ回る。その間にもリーベの姿は探すものの、地上にはどこにも見当たらず――
「つかまえた♪」
――頭上からの殺気に過敏に反応し、反射的に声がした方向へと瓦礫の剣を振るう。そこには落ちてくる瓦礫に乗っていたリーベが――いや、俺の瓦礫の剣の上に乗りかかったリーベがいた。
「つっ!」
振るう剣、振るわれるナイフ。瓦礫の剣を振りかぶった勢いで、体重の軽いリーベを吹き飛ばすことに成功するが、振るわれたナイフに顔面に横一線の傷跡がつく。ナイフを折って爆弾にする隙を与えなかっただけよしとしようとすると、リーベは落ちてきた瓦礫を蹴り飛ばし、その勢いで再びこちらへと迫ってきていた。
「ほら……ウチを、受け止めてよ!」
「代わりに手痛い一撃だ……!」
確かに驚きはあったものの、馬鹿正直に正面から跳んでくるのではただの獲物だ。宣言通り痛烈な一撃を与えようと瓦礫の剣を振るおうとすると、俺の視界を《黒い壁》が覆い尽くされた。予選でも本戦でも使ったリーベの持っているアイテムの一つ、《炸裂装甲》だと気づいたのはその直後のことで、巨大な質量兵器として俺に迫る。
「こっ……のッ!」
形だけ《抜刀術》の形だけを取ると、迫りくる炸裂装甲の側面を瓦礫の剣で思いきり叩く。もちろん、その圧倒的な質量の差はどうしても埋めきれないが、その軌道を少しだけ変えることなら出来る。瓦礫の剣は自身の耐久値を使いきってポリゴン片となって消滅していく代わりに、炸裂装甲を俺から少しだけズラすことに成功し、何とか質量兵器に押し潰されるという事態は避けられる。
そして《炸裂装甲》の背面に乗っていたリーベがこちらに接近するより早く、肩にかけていたAA−12を構えて特殊弾頭《FRAG-12》の残った分を発射する。《炸裂装甲》をズラした距離が少しだけのため、避けた俺と《炸裂装甲》に乗るリーベの距離もほぼ近距離――AA−12の必殺の距離だ。
それをリーベが避ける術はない。避ける術はない――が、防ぐ術はそれこそすぐ手元にあった。リーベはその小柄な身体のどこからそんな筋力値があるのか、炸裂装甲を自力で立ててみせると《FRAG-12》からの盾とした。
それは予選決勝で起きたことの再現。圧倒的な破壊力を持った《FRAG-12》だったが、それをその独自の機構で防ぐことの出来る《炸裂装甲》が全て防ぎきる。小さいながらも爆発が起こっていくそこから、たまらず後退した俺が見た光景は、弾切れになった《FRAG-12》と――《炸裂装甲》を盾にして生き延びた、踊り子の姿だった。
「ふぅー……」
深く息を吸うと、俺は弾薬が切れたAA−12を瓦礫の山に取り落とす。
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