第八十八話
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のようにもなっている瓦礫を歩いていき、最高地点で跳ぶことで部屋から廊下へとたどり着く。AA−12の最後のフルオートと刃の爆弾により、廊下は見る影もなくなっているが、その足元に落ちていた銀色の刃は健在だった。むしろ、俺に見つけて欲しいかのように。
「…………」
先のリーベとの戦闘で突き刺されかけた時、回し蹴りでその右手から弾き飛ばしたナイフ――結果的にはフェイクであり、それが彼女の作戦だった訳だが――何とはなしにそれを拾うと、容易く折れる構造となっているソレを観察する。回し蹴りの時に折れていたら、二人揃って爆発に巻き込まれていただろうか――と思ったものの、どこに爆弾が仕込まれているかは見当もつかない。このゲーム独自の仕様であろうか。
しかし、ナイフにだけ気を取られている訳にもいかず、俺は何とかその倒壊したビルから這い出ることに成功する。
――歌声に導かれるように。
「リーベ……」
倒壊したビルが目立つメインストリート。そこをステージとして、彼女は瓦礫に座り込んで自分に身体の側面を見せながら、誰を観客にしているのか歌っていた。その踊り子の服は多少煤を被っていたものの、特に目立つダメージはなく、回復されたかそもそもダメージがなかったか、と考えていると、リーベが俺の呼びかけに応えてこちらを見た。……そして俺の考えは、見当外れだったことを思い知らされる。
「あ! ショウキくん遅い遅い!」
そう言ってこちらに笑いかけるリーベの半身は、爆発の影響か焼けただれていて――至近距離で爆発したのだろう顔半分に至っては、もはや『笑う』という動作すら出来ずに、小さく痙攣を繰り返すのみで。それでもリーベが笑っていると判断出来るのは――焼けただれてない顔半分の方は、満面の笑みだからだろうか。
「ショウキくんは左手、ウチは半身。えへへ、お揃いだね! でもそれにしても、女の子を待たせすぎだよ?」
「遅いって言われるのは……慣れてる」
何か約束事や待ち合わせをした時、どうしてかいつも自分より先にいる彼女のせいで。
「リズベットちゃんのこと?」
「……ああ、そうだな」
その質問の答えを隠す理由も特になく――もしかすると、そんな姿になっても笑っているリーベに、気づかぬうちに同情してしまったのかもしれない。……だが、その答えを聞いたリーベは、ずっと浮かべていた笑顔ではなく、突如として能面のような表情と化していた。
「あははっ、そっかそっか、リズベットちゃんのおかげかぁ。あはっ――ズルいよね。ウチのお兄ちゃんは死んだのに。殺されたのにさ」
「お前――」
それだけ言い切るとリーベは――《SAO失敗者》と名乗った彼女は、再び先の笑顔を取り戻し、狂喜が交じった哄笑がこの世界に響かせていく。さ
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