十七話:覚悟と理想
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「はい、信頼してますよ、お父さん」
人を安心させる笑みに自嘲の言葉を乗せて届ける。
応えるようにシャマルも心の奥底からの信頼の笑みを向ける。
そんな笑みを向けられる資格はないのだと心は悲鳴を上げ、罪の意識から逃れようともがく。
全てを洗いざらいに吐いて楽になりたいと叫ぶ。
今すぐ喉を掻き切ってこの命を絶てと願いを告げる。
だが、それでも―――
「ああ、勿論だよ。君達は蒐集を頑張ってね」
―――シャマルが切嗣の笑顔が酷く歪んでいることを気づくことはなかった。
四人の少女達による見舞いも終わり、先程までの賑やかさが嘘のように亡くなった病室。
はやては一人、余韻に浸るように本の表紙を見つめていた。
そこへ、どこかに行っていた切嗣が戻って来る。
「どうだい、友達のお見舞いは?」
「うん、楽しかったよ。みんなええ子で、私みたいなのが友達でええんかって思うぐらいやった」
「大丈夫、はやては他の誰よりも優しい子だから」
「それって親馬鹿って言うやつやないん?」
「あはは、かもしれないね」
軽く笑い合いながら、椅子を取り出して座る切嗣。
しばしの間沈黙が場を支配するが不思議と嫌な感覚はない。
切嗣は不意にはやてを抱き寄せてポンポンと背中を叩く。
「ど、どうしたん、おとん?」
「友達もいないし、あの子達もいない。だから……無理して我慢しなくていいんだよ」
その言葉がはやてのやせ我慢を打ち砕く。
自身の胸を抑えて苦しそうに呻き始めるはやてを切嗣はさらに強く抱きしめる。
彼女は誰にも心配をかけないように感情を押し殺す癖がある。
皮肉にも育ての親に似たのか表情をごまかすのが上手いのだ。
「痛い…痛い…痛いよ……おとん」
「大丈夫、父さんが付いているから……大丈夫だよ」
もしも、はやてが誰にも引き取られることなく一人で生きていたのなら誰にも弱みを見せなかっただろう。
しかし、父親という最も信用できる人物が居た為に切嗣にだけはその我慢も脆くなる。
他でもない、その父親が自身を永遠の眠りへと誘う存在だとも知らずに。ただ、甘え続ける。
「おおきにな。大分楽になったよ」
「無理はしたらダメだよ。はやては我慢なんてしなくてもいいんだ」
「そんなこと言ったって―――おとんだって無理しとるやろ」
自身が無理をしていると返されて思わず背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
完璧に偽っていたはずだ。この体は何が起きようとも動じぬはずだった。
それなのにどうして。切嗣は乾ききった唇を湿らせてから尋ねる。
どうしてそう思うのかと。
「だって、おとん―――最近、笑ってないやろ」
真っ直ぐに目を
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