第二百三十話 本能寺へその十一
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「よいな」
「わかりました」
蘭丸は信長のその言葉にも応えた。
「さすれば」
「御主は腕も立つ」
信長は蘭丸にこうも言った。
「頭が切れ顔がよいだけでなくな」
「弓が、ですな」
「その弓に期待しておるぞ」
いざというその時はというのだ。
「ではな」
「はい、では」
「これよりですな」
「上洛じゃ」
信長は幸村と兼続にまた告げた、こうしてだった。
信長もまた安土を発った、後には平手が残った。
平手は信長を見送るとだ、すぐに傍にいた長谷川に言った。
「さて、文もう書いておる」
「何かあればですか」
「小谷の猿夜叉殿にそれをお送りするぞ」
信長の妹婿である長政にというのだ。
「よいな」
「すぐにですな」
「安土にも兵はおる」
伊達に信長が天下に号令を下す為に築いた城ではない、城には多くの兵を入れことがあった時に常に備えている。
しかしだ、それでもというのだ。
「それだけで足らぬことも考えられる」
「だからですな」
「うむ、小谷の猿夜叉殿に来てもらう」
こう言うのだった。
「あの方が来られれば間違いない」
「確かに、猿夜叉様ならば」
長谷川もつおい声で答える。
「何かあれば」
「そうじゃな」
「すぐに馳せ参じてくれて」
「安土を守ってくれるな」
「万全に」
「その時の備えもしておるしのう」
そのこともだ、信長は抜かりがないというのだ。
「しかとな」
「あれをですか」
「うむ、あれを使ってな」
「小谷からこの安土まですぐにですな」
「来て頂く」
「そうなっていますな」
「さて、何も起こらねばよいが」
平手はそうであることを願っていた、だが。
ここでだ、彼は傍にいた竹中に対して問うた。その問うたことはというと。
「それで星のことじゃが」
「はい、見ましたが」
竹中はその平手に難しい顔で答えた。
「恐ろしいことになっています」
「その星の動きがか」
「将星の周りに妖星が幾つも出ております」
「妖星がか」
「合わせて十一、その十一の星がです」
「将星の周りに出てか」
「夜の空全体に凶兆を見せております」
それが竹中の見たところだった。
「何か輝きが虚ろになっている星も三つありますし」
「左様か」
「しかしです」
竹中は難しい顔だった、だがその顔でもだ。彼はその表情を暗いものにはさせずそのうえで平手にこうも話した。
「将星の輝きは衰えず落ちる気配もです」
「ないのじゃな」
「将星は落ちませぬ」
竹中は言い切った。
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