第二百三十話 本能寺へその十
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「しかし神戸もあり長崎、平戸、それに横浜と港が開かれておる」
「さすればですな」
「そういった町を意識してですな」
「堺は商いに励む」
「負けまいとして」
「それが吉法師殿の狙いか、そしてその商いの競争がじゃ」
まさにそれがというのだ。
「織田家を、天下を栄えさえる」
「商いをより大きくさせ」
「そのうえで」
「そうなる、考えられたものじゃ」
家康は信長のその考えも褒めた。
「このまま天下は大きくなるであろう」
「ではこれより」
「さらにですな」
「織田家も天下も栄え」
「磐石なものになりますな」
「何があろうともな」
家臣達には今は気付かれてはならないと思ってだ、家康は信長との話のことについてはここではこう言うだけだった。
「そうなるわ」
「では我等は安心して」
「これよりですな」
「堺を見て回りそうして」
「楽しまれますか」
「奥と子達に土産も買ってやろう」
家康は上機嫌でこうも言った。
「とはいっても質素なものじゃが」
「殿、こうした時はですぞ」
石川が笑って家康に言って来た。
「奮発して」
「ははは、そうするのがよいか」
「はい、普段は質素を極めていますから」
「どうも何かにつけてな、わしはじゃな」
「質素倹約ですな」
「そのことばかりじゃな」
そこから考えてしまうというのだ。
「どうしてもな、しかしな」
「それでもですか」
「今回もじゃ」
「やはりですか」
「質素かのう。それが一番民によいからな」
「質素であることが」
「民にとってよい」
大名である自分がというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、今回もな」
「質素にされますか」
「そうしようぞ」
こうしたことも話してだ、そしてだった。
家康は意気揚々と堺に向かうのだった、その家康が出て暫く経ってからだった。信長も遂にだった。
毛利と服部を後ろにしてだ、幸村と兼続、それに蘭丸に告げた。
「ではよいな」
「はい、これよりですな」
「都に上がり」
「そのうえで」
「帝にお願いを立てる」
こう言うのだった。
「そうするぞ」
「畏まりました」
「では我等も」
「お供します」
「奥も一緒じゃ」
信長はこのこともだ、彼等に話した。
「よいな」
「帰蝶様もですか」
「そうじゃ」
こう蘭丸にも答えた。
「よいな」
「はい」
蘭丸は信長の言葉に一言で答えた。
「それでは」
「当然女達も一緒じゃ」
帰蝶に仕える彼女達もというのだ。
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