第二百三十話 本能寺へその九
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「後はじゃ」
「はい、何かあれば」
「逃げるだけじゃ」
「無理に戦わず」
「そう伝えておる」
「そして吉法師殿も」
「本能寺に入るがな」
その寺だった、信長が入っている城は。
「あの寺には何度も入っておるわかっておる」
「その間取りが」
「全てな」
まさにとだ、笑って言う信長だった。
「新助と小平太がおるしあの二人もおる」
幸村、そして兼続がというのだ。
「しかも十勇士までな」
「では吉法師殿も」
「逃げられる、そして逃げる」
その時はというのだ。
「ではな」
「その時はまた会いましょうぞ」
「さすればな」
こう話してだった、信長は家康を堺に送った。家康はことの真相を頭の中に入れてだった。そのうえで共にいる家臣達に言った。
「さて、堺じゃが」
「はい、あの地においてですな」
「楽しまれますな」
「そうしようぞ、安心してな」
「はて、安心とは」
榊原は主のその言葉に少し意外といった顔で返した。
「それはまた駿府におられた時とは」
「違うことを言うというのじゃな」
「はい、前右府様と会われて」
「まあのう、とにかく堺を楽しむぞ」
「して、ですな」
ここでまた服部が言って来た。
「何かあれば」
「頼むぞ」
「さすれば」
「そして皆で駿府に帰ろうぞ」
こうもだ、家康は家臣達に言った。
「それでよいな」
「さすれば」
「さて、都から大坂、そしてな」
「それから堺ですな」
「あの街に入ろうぞ。そういえば堺も」
家康はここで堺の町自体のことも話した。
「大坂の傍の港になってきたな」
「ですな、これまでは天下第一の商いの町でしたが」
「それがです」
「神戸にも港が開かれましたし」
「そこにも明や南蛮の者達が出入りして」
「少しです」
「天下第一といったものではなくなってきておりますな」
徳川家にもこのことは伝わっている、堺がそうした町になってきていることをだ。
「賑わいはそのままにしても」
「他の町も賑わってきていて」
「うかうかとはしていられなくなった」
「天下第一の町でいる為にな」
「そうなってきておる、よいことやもな」
競争のことを考えてだ、家康は言うのだった。
「商いの町も一つだとな」
「それで、ですな」
「人は落ち着いてします」
「そして安心してしまうというのですな」
「それで落ちてしまう」
その安穏となった分だけだというのだ。
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