九十四 瀬戸際にて
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事からもその威力のほどが窺える。
そして更に、【回天】の最中、君麻呂が全身の骨を硬化し切れなかった理由。
その原因は、戦闘中にネジが秘かに点穴を突いていたからだ。チャクラの流れを鈍くした事で、いざという時に能力を発動出来ないようにしたのである。
また、中忍試験に参加した君麻呂はネジとヒナタの試合を観戦していたので、【柔拳法・八卦六十四掌】が通用しなかった。だが、波風ナルとの本試験試合、彼はいなかったのだ。
つまりそれは、【回天】を知らない、という事。
以上から、ネジは切り札として【回天】を使ったのだった。
ぽたぽた、と髪から滴る水が川へ墜ちゆく。足下に波紋を描きながら、ネジは君麻呂の許へ向かった。歩くたびに、激しい水音が近づく。滝へと繋がる河川の中をネジは一歩一歩歩いて行った。
川と言っても浅瀬故に、倒れ伏した君麻呂の身体はほぼ水面に浮かんでいる状態だ。君麻呂の状況を窺う為に傍へ寄る。
その瞬間…――――。
「……なッ、」
「大した威力だ……」
視界が反転する。
寸前まで倒れ伏していた君麻呂。彼が現在、ネジの上に跨っている。
有利だった状況が一転し、ネジは逆に水中へ沈められていた。
「そ、んな馬鹿な…ッ!?」
ネジの渾身の力とチャクラを用いた【回天】。その威力をまともに受けたはずの君麻呂が未だ猶動ける事実に、ネジは愕然とした。
驚愕するネジを見下ろしながら、君麻呂が静かに口を開く。
「…皮膚のすぐ下に骨の膜を作らなければ、あっという間にズタズタになっていた…」
見ると、裂けた肌から垣間見える白。骨を皮膚の下に形成する事で、君麻呂は【回天】の威力に絶えたのだ。
肩で大きく息をしながらネジは君麻呂を見上げる。己のチャクラはもう無いに等しい。
背後から聞こえる激しい水音を意識の片隅に置きながら、ネジは瞳を閉ざした。
―――刹那。
「がッ…、」
「……っ!?」
ネジの上で馬乗りになっていた君麻呂。その肩に、骨が二本、突き刺さっている。
【回天】の衝撃で天へ舞い上がった骨の太刀。左肩から抜いた骨と、右肩から抜いた、君麻呂の得物。
それが、今、この瞬間、墜ちてきたのだ。
まるで君麻呂の体内へ帰るかの如く。
いきなり上方から墜ちてきた太刀に、流石の君麻呂も一瞬反応出来なかった。その瞬間を狙って、ネジは最後の力を振り絞る。
「――――【柔拳】!!」
チャクラを己の身体に集中し、密着した敵に大きな一撃を与える――【柔拳法・一撃身】。
渾身の打撃は君麻呂の身体を再び空へ舞い上がらせた。そして…―――。
ネジの背後。白く泡立つ滝壺へ向かって、君麻呂は吸い込まれていった。
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