九十四 瀬戸際にて
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上げたシカマルの眼に飛び込んできたのは、自分の想い人とよく似た青。
けれど寸前と違い、その瞳の奥には何らかの感情が見て取れる。その感情が何か知る前に、シカマルはナルトの次の言葉に気を取られ、それどころではなくなった。
「波風ナルが単独で、うちはサスケに追いついた」
最も危惧していた事柄が実現し、シカマルは動揺する。
サスケを見逃すという任務本来の目的。ナルにだけは絶対知られてはならないと、シカマルは綱手からもよくよく念を押されていた。
一方でナルからしたら里抜けしようとしているサスケを連れ戻すのが目的だ。こうなれば早く国境へ向かって彼女を止めなければならない。
思案するシカマルを前に、ナルトは多由也にそっと耳打ちした。
戸惑いを見せる彼女へ、にこりと穏やかな笑みを放った後、軽く木枝を蹴る。
シカマルと多由也のちょうど中心にあたる後方の木枝に飛び移った彼は、肩越しに振り返った。
「急いだほうがいい…双方ともね」
「シカマル――っ、無事か!?」
キバが現れたのとナルトが消えたのは、ほぼ同時だった。
寸前まで涼しげな顔で佇んでいたナルトの姿が、キバと入れ替わるように掻き消える。
立ち上る白煙を呆然と見つめていた多由也の顔がみるみる変わってゆく。ナルト本人ではなく影分身だった事実に、彼女は思わず悪態を吐いた。某鬼人と同じ台詞を叫ぶ。
「影分身かよッ!本人寄越せってんだ!!」
新たな敵の出現を怯みもせず、むしろ憤怒の形相で彼女はキバを睨みつけた。ナルトがいた時とは打って変わって、口調が乱暴なものへ変わる。
「ザコが…っ!邪魔しやがって!!」
影分身とはいえナルトが消えた原因がキバのせいだとでも言うように、怒り心頭に発する多由也。
現状把握が出来ていないキバが困惑する中、シカマルは溜息をついた。
音忍全員、一癖も二癖もある厄介な連中ばかり。
特に女性の身でありながら粗暴な振舞いが目立つ多由也を先ほどまで大人しくさせていたナルトにある意味感心しながら、彼はキバに状況を説明し始めたのだった。
「―――【椿の舞い】」
骨の太刀による連続の突き。
風を切る苛烈な攻撃を前に、ネジは【白眼】を発動した。
左肩から抜き、刀として用いていた君麻呂の骨は、先ほどネジが手放させた。だが骨を自在に操れる君麻呂にとっては意味の無い行為だったようだ。
左肩と同じく、右肩から骨を抜き、再びソレを太刀として用いる。【白眼】で、既に両肩の骨が形成されているのを見て取って、ネジは内心感嘆した。
太刀筋を見切り、尽く避ける。ネジの無駄の無い動きを見て、君麻呂がふっと口許に笑みを浮かべた。
「少々侮っていたが、なかなかやるな……」
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