怪しい依頼
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の」
「この前もそれがらみで酷い目にあったな……まあいい。報酬は?」
「今回は諸事情でちょっと色をつけておいたわ」
それを聞きながら、アーノルドは胡散臭い依頼だと思いつつ、
「それでこの少女を探して、この場所に連れていけばいいんだな」
「そうよ、よろしくね」
ニコリと微笑むメルシーからは、どんな裏があるのかは読めない。
何でも屋で使い勝手がいいとはいえこんな仕事ばかり回ってくるとアーノルドは心の中で溜息をつく。
出来れば日々、猫を探してといった平和な依頼だけを受けて生活をしていきたいと思う。
なのに来る依頼は荒事ばかりなのがな……そう嘆息しながらアーノルドは自身の義腕を見る。
“蒸気強化”の一種でこれを動かすのにも“有機魔素化合物”が必須だった。と、
「そういえばアーノルド、その義腕はそろそろ最新式に買い換えないのかしら」
「家の家計はそこまで裕福じゃないんだ」
「旧式は“有機魔素化合物”を喰うからどちらがお得なのかしらね。ああ、アリシアが確か格安で提供してくれているんだったかしら。でも、かかわらせたくないんだったら最新式のほうが効率がいいわよ?」
「……最新式よりも旧式のほうが使いやすいんだ」
「進化した最新式のほうが色々機能もついて便利だと思うけれど……」
「進化は進歩と退化を含む。こうやって進化していくことで、切り捨てられているものがあるんだよ。それが俺には“必要”だっただけだ」
「面白いはね。誰かの受け売り?」
「……俺の恩人たちが言っていた言葉さ。俺達は蒸気機関の発達、それも“有機魔素化合物”という特殊なエネルギー効率すらも上昇させる液体を得たがゆえの発達によって、どんな進歩の“可能性”を失ったのかてな」
「蒸気機関以外の進歩ね。夢のある話だわ。もしかしたならその生まれるかもしれなかった進歩の萌芽が踏み潰されて今があると」
「まあこんな雑談をしていても仕方がないから、そろそろ……」
「そうね、邪魔したわね」
メルシーが次の仕事の前に何処かでランチでも食べようかしら、と呟きながら部屋を去り、アーノルドが一人残されて。
「……人探しでこれだけというのも、奇妙だが。とはいえ仕事を選んでいられるほど裕福じゃないから仕方がないな」
愚痴をこぼすように呟いてアーノルドが呟き、事務所から鍵をかけてでたのだった。
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