十六話:真実と嘘
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い続けられる科学者が心底羨ましかった。
もっとも、あそこまでの狂った笑みはごめんだが。
「そう言えば、昔、管理局にハッキングかけたって言ってたような……」
「そういうこと。元々、完全に足を洗えるなんて思ってなかったしね」
「でも……それだと切嗣が……」
もう、切嗣が以前の生活には戻れないと思い、沈みこむヴィータ。
自身を想うその表情に心をナイフでズタズタにされる気持ちになりながら彼女に微笑みかける。
「大丈夫、僕だって子どもじゃない。
それに娘を見殺しにするなんて―――人間のすることじゃない」
何よりも自分に対しての皮肉を含みながら口にする。
騎士達は気づかない。この男がどれだけの隠し事をしているか。
どれだけの罪を重ねているのか。
何一つ知ることなく破滅への道を歩んでいく。
「それでは……これからも私達の手伝いを?」
「うん。まあ、これ以上はあまり派手には動かないけどね」
「それで十分です。危険な活動は私達だけで行います。主はやてだけでなくあなたもまた私達の守るべきものなのです」
「心配してくれるのかい?」
「当然です。私達はその……家族なのですから」
シグナムから少し恥ずかしそうに告げられた言葉に心が締め付けられる。
シャマルも笑顔で頷き、ヴィータも照れながら頷く。
ザフィーラも当然とばかりの表情をする。
そのことが、その温かさが―――何よりも彼を苦しめる。
「そうだね……家族だからね」
「ええ、はやてちゃんの病気が治ったらみんなでまた静かに暮らしましょう」
噛み締めるように、血を吐くように絞り出した家族という言葉。
その言葉にどんな想いが籠っているかを気づかずにシャマルは笑顔で告げる。
その願いが決して叶うことがないというのに。
「そうだよ。はやての足が治ったらもう戦わなくていいんだ。静かに暮らせるなら……他には何もいらねえんだ」
少し俯くようにヴィータも続く。小さな願い以外に何も望まない。
彼等の願いが叶ったところで誰も被害を受けない。
誰にも迷惑をかけないはずの美しい願い。
だというのに犠牲が強いられる。
どれだけの犠牲を払ったところで与えられるのは新たな犠牲と絶望。
そして、少女の永遠の眠りだけ。与えるのは家族が信頼する父親という皮肉。
「ああ、闇の書の完成を頑張ろうね」
「お任せください。必ず闇の書を完成させてみせます」
切嗣の言葉にザフィーラが力強く返す。
どちらも目指すところは同じ。しかし、理由はどこまでも正反対。
一人の少女を護ろうとする者。一人の少女を殺そうとする者。
両者の願いは決して交じり合うことはない。
「それじゃあ、話はここで―――」
終わりに
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