喪失
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と思い込んでいた。私が過去のトラウマから、そんな理想なんて現実にはあり得ないと決めつけてしまった。確かに人間は一人一人考えている事が全く違うから、人間同士分かり合う事や気持ちを通じ合わせる事なんて、管理局が全次元世界の治安を守れていない所などから見て相当難しいのだろう。しかし……本当はそうじゃない。実はそこまで難しい話じゃなかったんだ。
人間は……世界は……いつでもどんな時でも、心を一つに出来る。本当はもっと簡単なやり方で手を取り合える。そのやり方の一つが……“歌”なんだ……。
トクン……ッ。
静かな……水面に雫が落ちた時のように、とても小さい音。それが私の身体の……心臓よりも、心よりも内側から聞こえてきた気がした。瞬間、私の視界、聴覚、世界が広がるような感覚を覚える。そう、まるで星が母親のように歓迎しているかのような温かさを感じた。サバタさんとマキナ、マテ娘とユーリ、そして目の前のスバルとギンガ。出会えた皆のおかげで私は……ようやく心にも太陽の光が照り始めたようだ。まだ朝日にも満たない弱々しい光だけど……それは紛れもなく希望の欠片だった。
「あれ? おねーちゃん、身体が……光ってるよ?」
「魔法を使った様子は無いのに発光するなんて、この輝きは一体……?」
「淡い純白の輝き……美しいけど切なくて、どこか儚い光……。太陽とはまた違った心地よさがあるわね……」
少し離れた位置でオレンジの子も私の身体が発光している感想を述べる中、私達は今の曲を最後まで歌いきった。続いて私は心のまま、自分の最も好きな歌を歌う事にした。アクーナで死者へ向けてたくさん歌った“鎮魂歌”。……いや、月の力に覚醒した私の心が告げている。ある時は“子守歌”、ある時は“鎮魂歌”、そしてまたある時は“安らぎの歌”……そうやって歌い手によって解釈が変わったこの歌の真の名前を……。
さっきサバタさんにはわからないと言っちゃってるから少し罪悪感があるが、それなら今伝えればいい。同じ存在になった私の声が届けば、彼なら全てを察してくれる。だから届かせよう、この言葉を。響かせよう、私の想いを! 伝えよう、私達の太陽を!!
「エナジー全力展開! 絶唱、“月詠幻歌”……いきます!!」
入り口の瓦礫がマキナのレールガンとオレンジ髪の局員のファントムブレイザーの同時発射で吹っ飛んだおかげで太陽の光がこのシェルター内に降り注いだ瞬間、エンジェルハイロゥのような光を発しながら、私の全身全霊をかけたコンサートが開幕した。
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〜〜Side of フェイト〜〜
「しっかりして下さい!? 大丈夫、傷は浅いですよ!?」
「アレの性質上、傷は負ってないけどね。人間弾丸として撃ちだされただけだもの」
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