喪失
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している気がする。多分、抱えている物が次元世界の平均よりも総じて多いのだろう。それ自体は人として当たり前の感性だから別に悪いことじゃないんだけど、俗物的というか、世俗的というか……一言で言えば欲望が強い訳だ。
それが都会らしいというのか、管理世界の人間として当然の感覚なのか、田舎育ちの私にはちょっとわからないけど……生きていく上で大切な何かを忘れているんじゃないか心配にもなる。だからその点までは共感出来てはいない。
「アレ見てたらこっちも鬱々としそう。何か気分転換になりそうなものでもないかな……?」
「あ、サバタさんが言ってたけど、おねーちゃんって歌が上手なんだよね? 私、聞いてみたい!」
「え? 本当に聞きたいの、スバル? こんな状況で?」
「うん、聞きたい! 一緒に歌いたい!」
「あ〜むしろこういう状況だからこそ、歌は良い案だと思いますよ、お姉さん。歌っていれば心に元気が湧くので、私達でも気持ち的に恐怖と戦えるでしょうし」
「それに皆で歌えば、お父さんとお母さん、サバタさんの所にも私達の声が届くと思うからね。戦う事は出来ないけど、私も皆を応援したいんだ」
「応援……? そっか、スバルはえらいね。今でも皆の事を考えてくれてるんだもの。……じゃあスバルのお願いでもあるし、少しだけ歌ってみようかな」
「ワクワク……♪」
スバルが目をキラキラさせて見つめて来て、ギンガが隣で彼女をなだめる中、私は精神を集中……脳内に歌詞を思い浮かべて、目を閉じて胸の鼓動を整える。そして……声の旋律を奏で始める。
「Ah〜♪」
この曲はサバタさん曰く、聞いているとシャドーモセスの名を思い出すとか、壮大な物語全ての始まりを彷彿とさせるとか、最後に世界の悲しい現実を教えられるとか、そういう心に響く歌である。私が地球に来てから覚えた歌の一つで、歌っていると雪に覆われた物悲しい施設の景色がまぶたの裏に浮かび上がって来た。
「なんだ……歌?」
「あの子は……どうして歌っているんだ? でもこの旋律を聞いていると……心が洗われるようだ……」
「何故かしら……私達は何をしているのって思い返してしまう……。冷静さを失って愚かな事をしてしまったんじゃないかしら……」
俯いていた市民達が、突然聞こえてきた場違いとも言える歌声に顔を上げる。尤もそれは興味本位に過ぎないものだったが、今は彼らも私達も誰一人気付かなかった。抗えない絶望を前に無気力となっていた状態から、いつの間にか抜け出せていた事に。
「La〜♪」
「おぉ〜、おねーちゃん綺麗な声〜!」
「ええ、澄み渡っていて……とてもしんみりした歌声……。ずっと聞いていたいぐらいです」
スバルとギンガが静かに称賛してくれ
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