1部分:第一章
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すぐに店を出て仕事を再開した。まず入ったのはごく普通の家だった。次も同じだった。最初の家は成功しなかったが次の家では成功した。これに気をよくして次の家に入った。ところがであった。
その家は異様な家だった。外観はそうではなかった。普通にチャイムを鳴らした後でイヤホンに出て来た声に応える。まずこの声自体がおかしかった。
「何だ?」
「んっ!?」
いきなり何だと言われて内心顔を顰めさせた。
(何だ、か。これはまた)8
だがすぐに気を取り直した。こうした客も今までいないわけではなかったからだ。だからこう言われてもすぐに気を取り直すことができたのだった。
(まあいい)
内心こう言って己を落ち着かせた。
(多少乱暴でもお客さんだ)
己の中で言葉を続けていく。
(それに)
ここであらためて家を見る。二階建てで白い壁にオレンジ色の傾斜の強い屋根を持っている。窓は大きく縁が黒い。奇麗な家であると言えた。
「いい家だな」
家を見て気を完全に落ち着かせるのだった。彼は家やアパートが好きだ。そうしたものを見ているだけで落ち着くところもあった。これは幼い頃からであった。
「さて、じゃあ」
「おい」
だがここで。またイヤホンから声がしてきた。
「誰だ御前」
「私ですか」
「そうだ、御前だよ」
初対面の相手に随分ときつい物言いであった。
「御前、何だ?」
「私ですか。私は」
「早く言え」
上村が言うよりも先に言ってきた。完全に命令口調である。
「誰なんだ御前は」
「大和商事の上村です」
彼は内心引くものがあったがそれでもビジネスに徹して応対をした。この辺りは流石はベテランのやり手営業担当であると言えた。
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