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影男
5部分:第五章
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。君達は無意識のうちにストーカーがいるって思ったんだよ」
「それでだったの」
「あれが出て来たってのか」
「そうさ。これで話はわかったね」
「いえ、ちょっとそれは」
「わかれって言う方が無理じゃねえのか?」
 二人はいぶかしむ顔でこうアーサーに返した。
「私達がそんな奴がいることを望んでいたって」
「それは」
「その証拠に君達だけが見えていた」
 しかしアーサーはその事実を述べる。
「それが何よりの証拠というわけなんだよ」
「そういうものなのかしら」
「それであんな奴が見えたのか」
「けれど君達はそれの正体がわかった」
 アーサーはこんなことも言った。
「いないということもね。だからもうあの黒い男は見ないよ」
「そうなの。もう」
「いなくなったっていうのかよ」
「完全にね。幻は幻だってわかった時に幻じゃなくなる」
 こんな言葉も出て来た。
「だからだよ。これで私の治療は終わったよ」
 その言葉通り二人はもうその黒い男は見なくなった。そして二人はやがて結婚して仲良く過ごした。だがそれまでには確かにそうした障害があったのである。いなかったにしてもだ。


影男   完


                2009・12・29

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