4部分:第四章
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第四章
「本当にね」
「まあ私もそうだし」
「私はロサンゼルス生まれでね」
そこで生まれたというのである。
「両親はアリゾナで結婚してね」
「ロサンゼルス生まれでアリゾナに?」
「ああ、収容所に入れられていてね」
「収容所!?」
それを聞いて眉を顰めさせたのはサリナではなくジュゼッペであった。
「何だそりゃ、アメリカにそんなものがあったのか」
「あったよ。第二次世界大戦の時にね」
「へえ、あの戦争の時にかい」
「そうさ、西海岸にいる日系人は日本に協力すると思われてそれでなんだよ」
「そんなこと言ったらアラブ系なんか全員隔離じゃねえのか?」
「まあそういう時代だったんだよ」
アーサーは首を少し傾げてから述べた。
「昔はね」
「戦争は悪い奴をぶっ潰すもんだけれどな」
これがジュゼッペの認識だった。彼にしてもアメリカで生まれ育っているのでアメリカが正義の国であると思っている。そしてそれと同時に自由の国だとも思っていた。
「それでも収容所なんてな。何処の悪の国家だよ」
「私もアメリカは正義の国だと思うさ」
アーサーはいぶかしみ続けるジュゼッペに対してさらに述べた。彼もやはりアメリカ人でありこうした認識を持っているのである。教育の結果だ。
「けれどそういうことも起こるんだよ」
「難しい話だな」
「歴史というやつだよ」
また言うアーサーだった。
「それもね」
「歴史か。俺はハイスクールまで歴史はずっと赤点だったんだがな」
「それとは関係ないさ。とにかくだ」
「ああ」
「君達は二人共見てるんだね」
話を打ち切って単刀直入に述べてみせた。
「そうだね。その黒い男を」
「はい、それは」
サリナがこう彼に答えた。
「もう何度も。いつも一瞬ですが」
「一瞬ね」
「見えたと思ったらいないんですよ」
「それは俺もってわけでな」
ジュゼッペも言うのだった。
「何故か見えてもそれは一瞬で」
「それで消えるのか」
「まるで影の中に消えるみたいに」
「そんな感じなんだよ」
こう話すのであった。
「おかしな話だけれど」
「確かにいるんだ」
「そうなのか」
アーサーはとりあえず二人の話を聞いた。そしてそのうえでまた言うのだった。
「それだったら」
「それだったら?」
「何かわかったの?」
「うん、じゃあ」
こうして彼はまずは二人を自分の病院に連れて行った。そうしてそのうえで様々な検査をした。それは精神的なものを主に据えたものだった。
特に夢を見るのだった。それをだ。
二人を眠らせてそのうえで夢の言葉を聞くのだった。
二人並んで横たわっている。そうしてその中で。
言葉が出て来る。自然にだった。
「見ているのよ」
「そうだ、見ている」
眠り
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